(2022/02/01) 電力とは何か?
誰もが生活に欠かせない、ライフラインである事を知っている。それが電力である。これほど日常生活で無意識に利用しながら、その物理的意味ほど理解していない事も無いかも知れない。そのように書く自分も、長く電気回路現象を考えて来たにも拘らず、本当に深く理解してなかった。二月に入り、今年のカレンダーを一枚剝がした。何となく気持ちも穏やかでない中で、瞬時電力とはどの様な物理的意味で捉えれば良いかと考え直した。
概して、学術理論は、物理学理論は抽象的な数学式などの解釈手法で論じられるものが多い。決して電気現象を論じる時、『電荷』とは何か、『電流』とは何か等の本当の基礎的な概念については全く考えることをしない。決まった科学論の常識の上での話になる。その科学的常識に習熟していない一般の市民はその話に採りつくことが出来ない事に成り易い。
抽象論と具象論。誰もが理解し易い話は、目の前にある空間にその具体的像を提示することが求められる筈だ。光の振動数がどんな特性を示すか等との話は全く学術の解釈法に慣れなければ理解できない話になろう。漸く電力の空間での像が示せるかと言う処まで辿り着いた。だから具象解剖論とも言えよう。その意味で電力の解釈を示したい。電気回路現象には『電子』など何の役にも立たない過去に人が創り上げた空想的仮想概念である事をはじめに指摘しておく。
『オームの法則』と電力。
電気技術の基礎理論は⦅オームの法則⦆である。そこには『電圧』と『電流』と言う基礎技術概念で電気回路現象を解釈する基本が示されている。上の図は2005年に描いたものだ。2010年に 電流は流れず で電気回路は『エネルギー』の現象である事を述べた時も使った。この回路をオームの法則では
瞬時電力
の様な回路図で表現し、解釈する。『電圧』V[V] 、『電流』I[A]そして負荷抵抗 R[Ω]の3つの技術概念で回路動作を解釈できる。とても優れた、完全な電気理論と成っている。直流回路であるが、その電力も瞬時電力として、電圧と電流の積で評価できる。これが科学技術の自然現象を利用するための理論体系の重要な基礎を成している。
科学技術概念と自然現象。
電気理論が完璧であるから、『電圧』、『電流』がどの様な物理的意味かを問う事をしない、疑問にも思わない。その科学技術用の理論体系を構築するには、理屈が成り立たなければならない。論理的である為に、『電荷』とか『電子』などの理論の基礎とすべき物理概念を創造し、定義した。それらは物理学理論の分野から特に組み込まれた概念のように思える。電気回路論や電力技術分野で組み込んだものでは無いと思う。しかし、どう考えても自然世界に『電荷』や『電子』が存在するとは信じられない。今、電気回路現象のその真相が分かった時、やはり電源から負荷まで何が伝送され、供給されるのかと言えば、それは他でもない『エネルギー』でしかないのだと分かった。電力の単位ワット[W]は書き換えれば毎秒当たりの『エネルギー』量ジュール[J]を評価する単位である。その『エネルギー』の単位ジュール[J]で計量するものは物理量として意味を成さないと考えるのか?物理学の回路解析に『エネルギー』と言う概念が認識されていないから。電気料金を支払って使っている電気量『ジュール[J]』を電気回路の現象に考慮しないで理論が成り立つ筈は無かろう。長い科学技術の歴史の中で、理論物理学の中でその『エネルギー』と言う自然世界の根幹を成す『実在物理量』が無視されてきた事への驚きを禁じ得ない。
「瞬時電力」という意味。
その物理的意味を考えてみよう。筆者も感覚的に「瞬時」と言う用語はとても厳密性のある概念を表現すると思って、良く使った。『瞬時実電力』や『瞬時虚電力』あるいは瞬時電磁界などと使って来た。しかし、『瞬時電力』と言う用語の使い方は初めから矛盾を含んでいたことに気付いた。電圧と電流も瞬時値がある。その積も当然瞬時値になる筈と思う。しかし電力の単位の意味は1秒間当たりの値である。1秒間は理論的に時間の瞬時ではない。光なら30万キロメートル先まで届く時間だ。電気現象も光の伝送速度に近い変化の回路動作だ。『電流』だって「電荷」概念で解釈すれば、その単位アンペア[A]も『電荷』との関係で、[C/s]の様に1秒間当たりの値だ。それらの積が瞬時値になる訳は論理的に無理だ。然し実用的には「瞬時電力」と言っても電気技術論としては許されよう。然し乍ら、論理性を身上とすべき理論物理学では、そのような意味は使えないだろうと思う。確かに物理学では『電力』など意識しないから『エネルギー』と同様理論には無用の電気量なのかも知れない。
『電力』とは何か?
ここから電気物理学は始めなければならない筈だ。地球温暖化の社会的問題にもなる『エネルギー』を意識しない理論物理学では社会的責任も果たせない。「瞬時電力」は『電圧』と『電流』の積と言う捉え方では、その『エネルギー』の瞬時的状況を理解するのは無理である。せめて空間に流れる『エネルギー』の分布量を理解することで、その実態がわかろう。『電圧』も『電流』もその概念の奥には『エネルギー』を評価する技術概念であったことが隠されていたのだ。その意味は自然単位系の[JHFM]での解釈が必要になる。時空は[H] [F]で、そこには『エネルギー』だけが展開する自然世界がある。その『エネルギー』とは光であり、見える光も見えない電磁波もある。
「瞬時電力」は伝送エネルギー分布として。
オームの法則の回路を『エネルギー』伝送現象として観る。
漸く電気回路現象が『エネルギー』の伝送回路として理解できた。余りにも有り触れた電気回路だから、その現象を科学論文とするには拍子抜けするような気もする。到達した結果は誰もが分かり易いと思う。中学生でも『電圧』とは何ですか?等と質問したくなる科学技術概念の理論はそれなりに難しい意味なのだった。ただ『エネルギー』が流れている事を感覚的に捉えられるかである。特別に難しい数式もいらない。電線路の導体で挟まれた空間を、電圧の負側の電線導体近傍の空間を導線に沿って、ほぼ光速度に近い速度で、『エネルギー』が流れているだけなのだ。その『エネルギー』の分布量が幾らになるかは、電源の所謂「電圧」と言う技術概念がとても良く示しているのだ。
『電圧』は電源が持つ『エネルギー』供給能力を捉えた技術概念だ。電線路を張れば、その張り方で電気回路の空間構造が決まる。空間構造は電気解析で、分布定数回路として取り扱われる。電源電圧が直流であろうと交流であろうと、その回路特性はただ空間構造で決まる。科学技術解釈で『静電容量』と言うコンデンサの意味を使っている。それは正しく電線路の空間の、電気の『エネルギー』をどれ程保有できるかの特性値に成っている。電源に電気回路空間を繋げば、自動的にその電源の能力にあった『エネルギー』が電線路空間に流出し光速度の速さで、全体に規定の『エネルギー』分布空間を生むのである。電線路の単位長さ当たり、1m当たりの『エネルギー』分布量をδ[J/m]で捉えれば分かり易かろう。その意味なら「瞬時電力」と言った場合の物理的意味が分かると思う。光速度で流れる『エネルギー』だから、1m当たりの値など数μジュールでも大きな電力量となる筈だ。
無負荷時。『エネルギーギャップ』と『エネルギー』分布密度。
『エネルギー』分布密度δv[J/m]は電線路の空間構造に対して、電源が規定する『電圧』に対応して自動的に決まる。無負荷時なら、静的定常分布密度で電線路空間が『エネルギー』の値となる。この『エネルギー』の分布密度量は、電気技術量『電圧』の意味を表すものとして『エネルギーギャップ』と言う表現を使って来た。半導体接合面や電池の陰極電極表面空間に対してその『エネルギーギャップ』と言う用語を使わせて貰った。『エネルギー』は空間で片側に偏る性質があると認識しての使い方である。ロゴウスキー電極への印加電圧に対して、負電極側に高い密度の『エネルギー』分布を示して流れる。
負荷時。
負荷抵抗値は単位オーム[Ω]で決まる。純抵抗負荷なら『エネルギー』を一方的に消費する機能要素だ。しかしそれも抵抗内部は微細構造体であり、『エネルギー』を線路空間から吸収し、内部空間に貯蔵しそして高エネルギー密度空間と、温度上昇を来し、遂には外部空間に『熱エネルギー』、『光エネルギー』として放射する。負荷が掛かれば、電線路の特性値 C[F/m]から抵抗体内の構造空間に『エネルギー』が自然に流れ込む。抵抗体も内部は空間構造であるから、その機能はR=√(Lr/Cr)[(H/F)^1/2^] の様な次元で捉えられる。だから線路特性、特性インピーダンスZoとの比較値で解釈して良い。R=αZo と置いて良い。α=1.であれば負荷と電線路が整合した状態である。電圧による供給エネルギーがそのまま負荷に流れ込み、δv=δI [J/m]である。一般には、1<αである。その時のα値は
α=R/Zo=√(δv/δI) (訂正して、√を付けた。)
の関係がある。
新電気回路解析法。
自然世界の実在物理量『エネルギー』を認識した、電気回路解析法の新しい物理学理論への扉でもある。電気回路現象には『電荷』も『電子』も無縁の長物概念である事を認識することから教育は始めるべきだ。
(参考): エネルギー[J(ジュール)]とJHFM単位系 (2010/12/18)
日本物理学会に参加させて頂き、最初の発表内容でもある、2p-D-11 物理概念とその次元 (1998).