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三相交流回路の電圧ー電気回路技術を越えて―

オームの法則や単相交流回路の学習を通して電気回路の基礎を理解する。その時電圧と電流という技術量の概念と意味に触れ、その指導内容に従順に従い理解に努める。はじめは伝統に慣れ親しむ事からその道の技術者としての自負を持つことに憧れて精進する。その技術者仲間ではそれで十分であろう。その学習の途上で、『電流』とは何かなどとは考えない。電子の逆の流れを電流と言うと説明されれば、それでその通りの解釈に従い、納得して進む。物理学が自然の真理を説き明かす科学理論の根幹を成して、その理論で『電流』とは何かとは問わないから、学習するに疑問を抱く訳にはいかないし、そんな余裕はない。電気回路解釈法は、結局電圧・電流という電気技術概念量の計測量に基づいて解釈する以外他に無いのだから。それだけ電圧・電流の計測技術が優れていると言えよう。しかし本当は電線の中を電子など流れてはいないのである。この事を理解し、認識するには深く電気回路現象に関わり、多くの経験と訓練を積むことに依って初めて分かることであろう。真の学習は覚え習得した知識を、その先で疑い、理解できないと疑問を抱くところから始まるものかも知れない。知識を超えて、捨てることで新しい領域の自分なりの学習が始るものであろう。そんなことで、一通り単相交流、三相交流回路について学習した方がもう一度学習内容の意味を確認する作業として考えて見てはどうかと思った。

『電圧』と極性 その辺を三相交流回路を通して考えてみたい。

図1瞬時ベクトルの極性 電圧、電流で回路現象を理解するに、その大きさだけでなく極性、その値がどの方向の値として捉えるかがベクトルとして解釈するには重要である。特に瞬時空間ベクトルに表現するには極性を決める必要がある。線間電圧が電線路電圧という場合の電圧であり、相電圧では言わない。三相交流回路には、線間電圧と相電圧がある。回路解析の理論では相電圧での取り扱いが一般的である。しかし、現場技術者の間では線間電圧での捉え方が普通である。電力系統の公称電圧として、その線間電圧が系統規模を認識する基準となっている。その電圧をベクトルとして捉える時、その極性を例えば図のように決めて考える。線間電圧の総和はゼロになる。しかしその極性の採り方に因ってゼロとは成らないことにもある。上の線路上に決めて表示したA相とC相間の線間電圧v_acの極性では代数和はゼロにならず、v_ca(= – v_ac )の極性でなければならない。なお図の方向・極性は二電力計法の方向性を考えて、C相基準にした極性である。さて線間電圧から相電圧ベクトルを算定するには、その線間電圧の瞬時値から算定した代数計算値に各相ベクトルの単位ベクトルn_a等を採ることで得られる。

線間電圧と瞬時空間ベクトル 瞬時電力理論による電力補償法等の実用に関しては十分研究されているだろう。しかし、瞬時空間ベクトルに因る回路解析法が新しい交流理論の手法として一般化されるだろうと思い、その基本的な意味を深めて見ようと考えた。一つの方法として、線間電圧を基準にした瞬時空間ベクトルがどのようになるかを検討した。その結果、従来の相電圧を基準にした三相ー二相変換の空間ベクトルe と位相関係は同じであった。

三相瞬時空間ベクトル  ベクトル円 三相交流電圧が平衡電圧の場合は相電圧の総和も、線間電圧の総和もゼロである。その時の電圧ベクトルは円周上を等速度で回転する回転ベクトルになる。線間電圧と相電圧のベクトル和v_s =v_ab+v_bc+v_cae_s =e_a+e_b+e_cの間の位相関係を示した。なお図の電流ベクトルiの位相φは負であることを理解願いたい。sin φ <0である。

電圧と位相(図2)の電圧瞬時値で、線間電圧v_ab=V_m sin ωt を基準電圧として、ωt=π/3 の位相の場合を取上げて、各電圧のベクトル関係を(図3)に示した。なおこの時、線間電圧v_ca=0である。(図2)の電圧の値を(図3)のベクトル円上にプロットすれば任意の時間における瞬時空間ベクトルが決まることが確認出来よう。三相電力系統の瞬時空間ベクトル解析の解釈の基本はこのベクトルを描く事から始まる。電圧基準を相電圧にするか、線間電圧にするかは自由である。結果はベクトルの総和は同じ位相の位置に得られることが分かった。

瞬時空間ベクトルのベクトルの意味 ベクトル円上におけるベクトルの意味には少し数学的なベクトル解析と異なる点がある。(図1)の電線路に表示した相電圧、線間電圧のベクトルの極性から勘違いしないように注意したい。

ベクトル相互間の関係 線間電圧と相電圧の間のベクトル関係についての留意すべき事。線間電圧ベクトルv_ab=(e_a-e_b)n_a であって、相電圧ベクトルの差e_ae_b ではない。

電圧は保有エネルギー技術評価量 電圧という電気技術評価量は結局電線路空間に保有されたエネルギー量の規模を認識する概念であると言える。その電圧は実に優れた技術概念であり、その電圧に因る回路現象を解析するにベクトル円が有効であろうと考えて、少しその瞬時空間ベクトルの意味を掘り下げて見た。

電圧は保有エネルギー技術評価量 電線路が無負荷の状態で考えて見る。電圧を印加すれば、電線路全体は静電容量の回路と等価と看做されよう。コンデンサ内に貯蔵されるエネルギーの電源周期に因る周期的変動の負荷回路である。電線路全体の線路間の総容量をC[F]とした時の貯蔵エネルギー量を示した。

『問題』 瞬時空間ベクトル図に関する簡単な問題を考えてみよう。

極端な例題かもしれない。発電所の同期発電機はStar結線である。Δ結線にすると、巻線間の僅かな電圧差で、内部循環電流が大きな過熱原因となるからであろう。そこで、Star結線のA相だけ電機子巻線を不平衡にした場合の例でベクトル円上の電圧ベクトルがどのような軌跡を描くかという問題である。当然一般の相電圧間の条件、e_a+e_b+e_c=0は成り立たないことになる。しかし線間電圧の総代数和はこの場合もゼロである。

まとめ 電気回路を考える時、電圧と電流がその回路解析の基礎概念である。しかし科学技術として確立した電力供給エネルギー機能設備も、その深い奥では自然現象の眞髄が根底にあることを理解すべきであろう。電圧という技術概念の意味を探れば、それも『エネルギー』の一つの人間の評価解釈量であると言う意味が観えてこよう。そのような深い自然の意味を考えるのが理科教育の目標ではなかろうか。

 

三相交流瞬時空間ベクトル

はじめに 電気現象を理解するには、先ず『電気エネルギー』とは何かを知って欲しい。現在の教科書にはその基本が示されていない。だから専門家にこそ理解して欲しい。決して『電荷』論では理解できない筈だ。電気エネルギーは電線路を張り巡らすことで、どこにでも供給できる目に見えない不思議な『エネルギー』である。『電荷』が流れると言われても、その『電荷』はどのように『エネルギー』を運ぶと言うかの説明ができるのか。不思議と言う意味は、教科書で説明されていないから殆ど教えられていないと言う人間の思考上の不思議と言う意味をも含んでのことである。科学論の不思議は人間の不思議でもある。このような文章も本当にその意味が伝えられるかと言う疑問がある。この『エネルギー』は全く質量など無関係で空間に存在するものであると言う意味を理解して貰わなければ、上の文章の意味が伝わらないと言うことである。この『エネルギー』の意味を物理学という学問で認識しているのかという疑念があるのだ。物理学という理科あるいは自然科学の根本原理であると考えられている学問分野で、『エネルギー』という用語の本質を捉えていないという現実をみんなに理解して、教育のあり方を考えて欲しいと願う。今までに論じた『電荷』否定の関連記事を挙げさせて頂く。クーロンの法則を斬る ドアノブの火花ー熱電変換ー 雷は熱爆発だ 『電荷』否定への道など。

三相交流回路の電気現象 三相交流回路の電気現象を理解するには、その三本の導線で供給する『エネルギー』が基本的には直流の一定値であると言うことを知って欲しい。二本の導線で供給する単相交流回路の三倍の『エネルギー』を導線一本追加するだけで可能だと言う技術的効率の有効性を。すべて『エネルギー』に注目して欲しいのだ。その上で、瞬時電力理論で論じる瞬時空間ベクトル(文献1,2)とはどのような意味があるのかを説明してみたい。確かに制御するのは『電流』という電気技術量であるが、その目的は瞬時電力という『エネルギー』の時間微分量を制御しているのである。その『エネルギー』を効率良く伝送するには無駄を省きたいから、無効電力という厄介な『エネルギー』の流れを抑制したいと言う技術的手法として瞬時電力理論が提唱された。その理論は電気現象を瞬時空間ベクトル上で解釈する手法で理解し易いと言うことである。三相交流電圧が平衡の場合はその瞬時電圧の総和は常にゼロになる。しかし空間ベクトル上で表現すると、一定の回転速度の電圧ベクトル(文献3に基本説明)として捉えられることになる。何故そのようになるのかを初心者にも分かるように説明できたらと願う。

三相交流電圧

三相交流電圧三相交流電圧と位相 三本の導線で構成される電線路には、線間電圧と線路電流でその電気現象の状況を知るしか方法がない。電線路の空間には何も検出できるものはない。送電鉄塔の懸垂碍子の劣化状態を検査する検出(電圧、電界)器具などを子供(日本発送電株式会社の姿散宿所)の頃見た記憶があるが。需要家は線間電圧(vab、vbcおよびvca)しか使えないが、発電所の発電機は相電圧のStar結線で、相電圧(ea、ebおよびec)である。瞬時電力理論で解析する場合は、相電圧を基本に取り扱う。負荷は線間電圧負荷であるが、相電圧に変換して解釈する方が取り扱い易いからであろう。瞬時空間ベクトルでは基本的に相電圧に変換して取り扱う。変圧器をStar結線にして電圧を検出すれば、相電圧が得られる。また次のような線間電圧と相電圧の関係があるから、相電圧は算定できる。実際に電圧と電流の瞬時値を検出するには、電線路に変圧器(Tr.)や変流器(CT)を接続して測定することになる。

線間電圧と相電圧

三相ー二相座標 平面空間に三相と二相の電圧ベクトルを展開して解釈する。

単位ベクトルと三相ー二相座標単位ベクトルと座標 三相交流電圧が平衡であれば、位相が120度(2π/3)ずれた電圧である。そのA相、B相、C相の各相電圧を平面上に2π/3角度ずつ位相差を持つ軸を設定する。その軸上に単位ベクトルを設定して各相電圧の瞬時値を反映すると、その各電圧は平面上のベクトルとして捉えることができる。その各相電圧ベクトルのベクトル和を採ると、ベクトルes=ea+eb+ecが得られる。

三相電圧ベクトル 空間ベクトルの回転する意味が分かり難いかもしれないので少し説明をする。特別難しいことではないが、初めての人にも分かるようにと考えて、ただ具体的に突き詰めて見ることで分かると言うことを示したい。

空間電圧ベクトルの回転位相と電圧ベクトルes 三相の電圧位相(時間t)の経過に従って、各相の瞬時値をベクトル軸上に投影してみる。A相の電圧を基準にして、ωt=0の時刻ではB相電圧は負、C相電圧は正でA相電圧はゼロである。その状態の電圧分布が0あるいは12の位相の場合に当たる。位相を12等分して一サイクルとすると、丁度電圧ベクトルesは一回転する。

三相電圧ベクトルes  総和電圧ベクトルesは相電圧の最大値をEmとすれば、その大きさ(3/2)Emの回転ベクトルesとして捉えられる。図はある時刻ωtでの様子を示した。

二相電圧・電流ベクトル 標準的な理論は三相交流を二相座標上に変換して解釈する方法である。三相のままでは、その電圧と電流から電力系統に潜む電気エネルギーの本当の姿は捉え難いのである。二相座標変換解析法は優れて、技術と芸術の融合した手法にさえ思われる。電気現象の本質を理解するには三相交流回路の二相座標変換した空間ベクトルによる論考が欠かせなかろう。

二相電圧・電流ベクトル 三相電圧・電流ベクトルをα―β二相座標上に分解したものである。ただし『エネルギー』あるいは電力値との整合性を得るための変換係数√(2/3)倍となる。電圧ベクトルeeαの直交電圧ベクトルの和に分解できる。電流も同様である。なお、この電圧ベクトルeの2乗はe^2^=V^2^となる。Vは線間電圧実効値。図には電流ベクトルiを電圧ベクトルeの同相分と直交分との二つに分離した意味も欲張って示した。α相の瞬時有効電流iαpと瞬時無効電流iαqの意味をも示した。以前単相交流電流の瞬時電流分離について論じた事が三相交流でも同じ意味で理解できる訳である。

瞬時空間ベクトルと瞬時電力 二相電圧・電流ベクトルに因る瞬時電力は次のように定義される。しばらくは文献3.のはじめの内容が参考になろう。(続く)ここにもう少し説明を加えようと考えたが他の記事で述べたい。

線間電圧と瞬時電力 上の二相空間ベクトル表現を三相線路の線間電圧によって表現すると次のようになる。二相瞬時空間ベクトルで基本的概念が理解できれば、実際上では三相電圧と電流で瞬時電力が評価・検出できるので、その意味を示す。

線間電圧と瞬時電力、瞬時電流 三相交流回路は線間電圧によって解釈するのが一般的である。瞬時電力のpおよびqは線間電圧で表現できる。従ってその電力から直ちに各相の瞬時有効電流及び瞬時無効電流も算定できる。三相回路の電流分離の意味である。

瞬時有効・無効電流 瞬時実電力pと瞬時虚電力qから線路電圧により直ちに三相各相の瞬時電流が算定できる。なおVは線間電圧の実効値である。この分離電流から各相の瞬時有効電力、瞬時無効電力も相電圧との関係で直ちに算定できる。

瞬時虚電力の意味 瞬時電力理論で最も重要な理論の要は瞬時虚電力qに集約されよう。電線路空間の『エネルギー流』で瞬時実電力pは電線路観測点で、電源側と負荷側の間での実際の流れを捉えた電力である。しかし瞬時虚電力qはpのような『エネルギー』の流れを評価する技術量ではない。観測点ではどちらにも流れている訳ではない。差引ゼロである。それが無効電力の意味である。しかし三相の三本の導線の導体近傍を『エネルギー』が流れているのである。いわゆる三本の導線で囲まれた空間内を『エネルギー』が循環して流れているのである。しかしその空間内をまとめてみれば、どちらに流れていると言う訳ではないのだ。差引ゼロである。その『エネルギー』の流れが無効電力という技術量の意味である。流れていない『エネルギー』の還流状態を評価する技術量が瞬時虚電力qという概念である。電線路空間内全体をまとめて観た時、『エネルギー』は電源と負荷間を往復する実際の流通量の実流と還流して差引ゼロの無効流(虚流)との二つしかない筈だ。それで全ての『エネルギー流』を捉えた筈だ。電線路空間内の『エネルギー』を認識することにより、その電気現象の状況が分かり易く捉えられると思う。『電荷』では電気現象を捉えられないと思う。当然『電流』概念でも十分分かったと納得できないだろう。すべては『エネルギー』の実在性を理解する事から始めたい。

まとめ (続く) 「三相交流回路の電圧」等の記事でまとめを追加したい。結局『電圧』という技術概念の意味を『エネルギー』でどう解釈するかという物理的問題、自然哲学になろうから。

(関連記事) 電気現象は『エネルギー』とその光速度伝播現象である。光と電線路空間のエネルギー分布・伝播に統合した解釈に至るまでの思考の主な関連記事を挙げておく。電流や電圧の電気工学概念と電磁気現象の物理学としての眞髄は異なるのである。物理学で『電荷』の否定できない電磁気学は理論としての物理学の存在意義が疑われる。電気工学としての瞬時空間ベクトル解析を論じるに、電線路空間を伝送する『エネルギー』の実在性を認識したうえで、ようやく今安心できる感覚に在る。8.は瞬時空間ベクトル解析の一つの具体例と言えよう。

  1. 新世界への扉ーコンデンサの磁界ー
  2. 光の速度と空間特性
  3. 光とは何か?-光量子像-
  4. 光速度は空間定数(H/m,F/m)で決まる
  5. 空間ベクトル解析と単位ベクトル
  6. 変圧器の奇想天外診断
  7. コンパスと砂鉄の心
  8. pq理論のリサジュー波形を見つけて

(文献)

  1. 赤木他:瞬時無効電力の一般化理論とその応用 電学論B 103,483 (昭58-7)
  2. H.Akagi,Y.Kanazawa,and A.Nabae : Instantaneous Reactive Power Compensators Comprising Switching Devices without Energy Storage Components IEEE Trans.Ind.Appl.,Vol.IA20,no.3,1984,p.625. (恥ずかしながら、著者紹介欄で人の書き方をそのまま真似た為、助手の身分(実際は教官でなく事務官扱いだったかも知れない?)を間違った。)
  3. 金澤:空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 電気学会 電力技術研究会資料 PE-86-39 p.71.(1986/08/04)

花一匁

花一匁

三相交流電気回路には不思議がいっぱいある。瞬時空間ベクトルを考えると不図気付くのだ。当たり前と思う事が不思議に見えるから不思議なんだ。道端に咲く花一輪にも宇宙の不思議に負けない不可思議が囁いている。

空間ベクトル 何で空間ベクトルは描けるのだろう。技術って面白い。感謝しよう。

三相交流回路の負荷と無効電力

久しぶりに三相交流回路について考えてみる機会を得た。30年以上も昔に少し専門的に取り組んでいた電気現象の話でもある。今長い科学漫遊の末に辿り着いた、電線路上における『空間エネルギー』概念に基づく新しい電力系統解釈論とでも言うものかも知れない。電力技術論としての長い伝統のある電力理論に『瞬時虚電力』の意味を、その物理的(物理学的ではない)現象解釈を取り入れた教育指導法となろうか。三相交流回路の無効電力について考えてみたら、分からない事が多くあることに気付かされた。昔工業高校で、電気工学の授業準備をしていた頃のことを思い出した。黒板にどのような板書で図形表現をしたら子供達が分かり易いかと工夫を凝らした事を。皆さんはどのように無効電力の意味を解説しているかと検索してみた。私が疑問に思うことに答えている解説は残念ながら見当たらなかった。能力不足乍、少し元から無効電力の意味を考えてみようかと思った。

無効電力の不思議 電線路上のある点で負荷側の無効電力を測定しようとする。測定量は線間電圧実効値Vと線路電流Iおよびその電圧と電流の波形上に現れる位相差角度θのみである。それだけの測定結果によって無効電力は確かに算定は出来る。伝統的電力理論によって。しかしその物理現象を捉えようとすると、不思議にも捉えようがない事に突き当たるのだ。

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電線路の無効電力 無効電力は現実には無理であるが、負荷が一定で安定した特殊な場合に限定して、無効電力Q=√3VIsinθ[Var]と判断する。

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電力ベクトルと無効電力 電圧と電流の位相差に因って、電力の有効電力と無効電力を電力ベクトルとして直交三角形で解釈する。このように、ベクトル図形で、『電力円線図』などによって電力系統の状態を解釈する。しかしこの無効電力を計算で算定しようとすると?その事をまず取り上げて、無効電力の負荷要素のエネルギーの挙動まで調べてみようと思う。

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三相交流電力 以下の三相交流電圧はすべて、相電圧波高値Emの平衡電圧として考える。

(1)抵抗負荷

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抵抗負荷の電力 三相電力配線はその有効電力が一定値の直流電力に成ることにその優れた点があると言えよう。三本の電線路で囲まれた線路空間を通して一定のエネルギーが伝送されるのである。

(2)誘導性負荷 一般の無効電力の原因となる回路要素は負荷に含まれるインダクタンスである。そのインダクタンスLのみの負荷の電力を計算してみよう。

誘導性負荷の電力誘導性負荷の電力 インダクタンス負荷の三相電力を計算すると、その値は「ゼロ」となる。結局無効電力は電源側からは何も送って居ないのである。この事が良く認識しなければならない重要な点である。何も電力を送って居ないにも拘らず、電源側にとっては誠に厄介な電力成分となっているのである。電力零でありながら、系統への影響が大きいのだ。無効電力と言う電力は供給エネルギーの時間微分ではないが、電線路上に影響を及ぼす原因は『エネルギー』以外ないのである。電子による『電流』概念ではその本質に迫れない筈だ。電力ベクトル図では何となく理屈に合っているように思われるかもしれないが、それはあくまでも電気技術に基づく解釈法でしかないのだ。

(3)容量性負荷の電力 同様にコンデンサ負荷の場合も計算してみよう。

容量性負荷の電力容量性負荷の電力 三相電力が零に成るのは無効電力であるから当然な事であるが、その意味を考えて納得しておく必要があろう。いわゆる物の理屈(物理)として。

負荷の回路要素としてのエネルギーの振る舞い 前に単相回路については電気回路要素のエネルギー(数式と意味)で解釈を示した。三相回路ではまたエネルギーの相間での回転の意味を知っておくことも大切であろう。そんな意味を踏まえて『エネルギー』から三相の負荷の様子を眺めてみよう。

三相電線路空間のエネルギー

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三相電線路とエネルギー 三相電線路は地中ケーブル配線もあるが、電柱の市内配線や街外れの鉄塔が目に付く。三本の導線で電気(エネルギー)を配電している設備だ。未だ導線内を電子が流れてエネルギーを供給していると考える教科書の理論が支配的であろう。その電子論も少し考え直してみば、説明の付かない点に気付こう。電線の表面に強い電磁エネルギーの高密度空間ひずみが存在している。それはもし電線の中味をくり抜いて表面だけの中空電線にしても、殆ど同じ表面の電磁エネルギーひずみがある筈だ。電子が電線の中を流れると解釈するなら、電線の外に電磁エネルギーのひずみをもたらす原因が電子に因ると考えざるを得ないが、それならその歪みのエネルギーは電子が電線の外部まではみ出してエネルギーを広げていると言うのだろうか。送電線には傍に行くと『ジー』と言うコロナ放電の音がする。それは空気が電線の表面に電子の電荷が高密度で分布し、空気の絶縁破壊を起こしている放電現象と電気工学では解釈されている。その絶縁破壊を起こした『エネルギー』は電子の電荷がエネルギーに変換された現象と観るのだろうか。『エネルギー保存則』と言う物理現象の大原則を厳密に認識するなら、曖昧に過ごす訳にはゆくまい。『電荷』とは便利に理論上『エネルギー』に変換するものなのだろうか。コロナも光としてエネルギー放射されているのだ。その光の基は「何」が変換されたのかを理屈として明確にしなければならなかろう。言いたい事は、『電荷』など破棄しなければ、何時までも曖昧な電気理論が科学の矛盾を引き摺り続け、それで良いのかと言う事だ。『エネルギー』は電気だけでなく、すべて空間にその独立した存在なのである。熱なら物質に纏いついて。光なら自由空間を伝播する。だから配電線路や送電線路もその三本の電線の近傍空間を『エネルギー』を運ぶのである。導線はその道しるべの役目である。ただそのような自然現象の本質を科学技術として如何に巧みに利用するかを構築して来た先達の偉業は益々輝くものであろう。しかし教育としてどう取り扱うかが哲学的な視点で再構築されるべき時代に来たと言う事であろう。多寡が配電線路と眺めても、そこには深い意味が隠されている事を認識したい。

三相負荷要素とエネルギー 電気的要素は抵抗R、インダクタンスLそしてコンデンサCの三つである。実際の電気回路にはアーク炉や負荷断続や複雑な負荷が繋がれて、その電気現象は瞬時的変動の連続状態を呈する。その苛酷な電力需要の要求に対応するには補償装置や安全対策が講じられている。先ずはそれぞれの単独の回路要素負荷についてそのエネルギーの振る舞いを理解しておく必要があろう。

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三相交流回路のエネルギー 負荷をStar結線で考える。LとCはエネルギー貯蔵機能要素と看做される。しかし抵抗Rはそのエネルギーの意味を考えると、少し複雑に思える。電力はエネルギーではなく、エネルギーの消費率であるので、捉え難い点がある。モーターの仕事を思えば、回転体には誘導性のエネルギー貯蔵機能があり、仕事として消費されるエネルギーは仕事率の動力ワットである。その動力が抵抗の機能に相当するものである。先ずはLとCについて、その貯蔵エネルギーの振る舞いを尋ねてみよう。

電圧と位相 負荷印加電圧の位相で要素のエネルギー貯蔵量がどのように変動するかを調べるその基準を示す。

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三相電圧と位相 三相電圧のa相電圧ea=Em sin ωt 、b相電圧 eb=Em sin (ωt-2π/3)、c相電圧 ec=Em sin(ωt-4π/3) として、a相電圧を基準にして考える。1サイクルを12等分して、その各状態のエネルギー量を比較する。

(2018/10/30)追記。以下の記事が間違っていたかもしれない。少し時間をかけ検討したい。各相電流の2乗の和の係数が3/2となる処を単に3と間違った。(2018/11/01)追記。誘導性負荷の記事の内容で筆者の計算間違いに気付き、混乱し大変迷惑を掛けたことお詫びいたします。一応三角関数の計算の係数3/4とすべきところを3/2と誤っていたので、訂正した。

誘導性(L)負荷のエネルギー

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誘導性(L)負荷とエネルギー分布 三相負荷に対して、相順ABCを図のように時計回りに配置した。位相3はa相電圧が最大値の時である。図の円外に矢印でベクトルを記した。そのベクトルeは別の記事での瞬時電力ベクトルの場合に関係する記号であるが、その位相に従って回転する空間ベクトルを付記して示した。e=√(3/2) (ea+eb+ec) であるが、ここでは瞬時ベクトル解析論とは回転方向が逆になっている。さて、図の様子を見れば、Lのエネルギー分布が反時計方向即ち電圧ベクトルの回転方向と逆向きに移動していると観れる。電圧1サイクルにエネルギーは逆相順で2サイクルとなっている。そのエネルギー量は総和で、Wl=(3/4)Em^2^/(ω^2^L)の一定値である。(2018/10/30追記) 係数が(3/2)でなくて(3/4)かも知れないと気付いたので計算の確認をする。wl(J)分布図も間違いかもしれない。(2018/11/01追記)Wlの係数を(3/4)に訂正した。wl(J)の分布図は正しかった。図では、そのエネルギー分布が1+2(1/4) の場合と2(3/4)の場合との二通りである。その円の半径1とは、全貯蔵エネルギーの2/3で、結局エネルギー量(1/2)Em^2^/(ω^2^L)の意味になる。

容量性(C)負荷の場合 コンデンサの場合のエネルギーの相間分布の様子をリアクトルと比較してみよう。

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容量性負荷のエネルギー分布 Lの場合と比べて電圧位相に対する様子が違う。当然の事であるが図で表現すると分かり易い。電源周期の2倍周期で負荷内でエネルギーが回転している。

抵抗負荷の電力分布 エネルギー変換消費要素の抵抗ではエネルギー量を捉えることは出来ない。電力分布で示す。

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抵抗の電力分布 電圧回転ベクトルe とやはり逆向きに電力分布が回転している。抵抗負荷については、そのエネルギーを捉えることが出来ない事も電気技術量(電圧、電流及び電力)の意味に不思議を思う。負荷抵抗はエネルギー変換機能要素だから、要素が吸収するエネルギーと放出(消費)するエネルギーがある平衡状態に在るからだ。

瞬時無効電力の算定法は如何にするか? この解決法が『瞬時電力理論』である。どんなに電圧、電流が変動しても瞬時の無効電力を算定できる。その解釈を電線路空間のエネルギー挙動から次の記事で考えてみたい。(2017/09/14)この負荷と無効電力についての基になる記事電気回路要素のエネルギー(数式と意味) (2016/08/16)がある。

(2017/07/14)追記 今年になって電気工学分野の電気回路解析を『エネルギー』からまとめて分かり易い解釈法は無いかと模索してきたが、次に記事でと言う予定にも辿りつけないでいる。電気回路の『時定数』の意味に改めて深い意味があることを知り、行き先未定の途上にある。(2017/09/14)何とかこの『時定数』に関する回路解析については時定数から観る電気現象及び時定数と回路問答にまとめた。