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整流回路とリサジュー図形

遥か昔々の話になるが、大学の学園紛争の頃に半年間の内地留学(東京工業大学、宮入・片岡研究室)でパワーエレクトロニクスという半導体素子での電力制御や動力制御の最先端の学術研究の雰囲気を経験する機会に恵まれた。電気回路の深い意味を解析する電気技術の魅力に傾倒し、基本回路動作を実験を通して確認する事が出来た。最初が電力半導体整流回路であり、それが末尾の文献である。当時既にトランジスタで汎用の電動機を制御したり、鉱石運搬巨大車両を制御するアメリカの最新技術に驚嘆した。その頃高等学校の電気実習でも、半導体素子に因る電動機制御を採りいれるべきと勝手に思い込んで、学習指導要領の内容にそぐわない生徒実習を行っていた当時を苦笑する。正弦波交流回路だけでは、伝統的業績・過去の法則尊崇の念に縛られて、電気回路現象の奥に秘められた『エネルギー』感覚は身に付かないと思う。その正弦波をスイッチングすることで、はじめて回路内の『エネルギー』処理の意味が感覚的に理解できる筈だ。その『エネルギー』には決して質量は関係していない事を理解し、物理学の質量に依存した『エネルギー』感覚から脱却できる手掛かりになろう。今回は、30年程前に考えた電力系統の制御・監視システムの瞬時電力理論でのリサジュー図形の意味を基本的なところで復習しておこうと考えた。初心者の理解に役立てば良いのだが。
三相全波整流回路 電気回路技術は半導体と言う分類に入る元素(シリコンやゲルマニューム)の存在とその特性に負う科学技術の微細構造素子の開発に因って現代社会構造が構築されたと言っても過言ではなかろう。電力回路技術の基本回路に整流回路が有る。    三相全波整流回路 6個のダイオードを繋ぐだけで、三相交流から直流電圧に変換できる。電源が三相平衡電圧ea 、eb およびecとする。線間電圧実効値Vとする。直流電圧の平均値Vdは1.35Vとなる。半導体素子のダイオードは何の制御機能もないが、その両端に掛かる電圧極性だけで、自動的にスイッチング動作をする極めて便利な素子である。この回路動作を理解するには、半波整流回路でのダイオードのスイッチングを考えると良いかもしれない。蛇足ながら、p側ダイオードA,B and C とn側のA’ ,B’ and C’ のスイッチングに分けて考える事にしよう。

p側ダイオード素子のオン区間

    p側ダイオードのスイッチング 三相交流電圧の内で一番電位の高い素子がオンする。その時他の素子には自動的に逆バイアスの電圧が掛ることになる。一つの素子がオンすれば、他の素子は必ずオフとなり、極めて回路動作が安全に保たれる訳である。n側ダイオードも同様に素子の電圧極性で、自動的にn点に電源電圧の最も低い電圧の相の電位が繋がる。

オン素子と整流電圧

オン素子と直流電圧 電源電圧の最大値の相と最低値の相が自動的にダイオードのスイッチングで、プラスのp点とマイナスのn点につながる。その結果、線間電圧で最大値の相が負荷側の直流電圧となって現れる。図3に示したようになる。直流電圧も電源周波数の6倍の微小変動の波形であるが、リアクトルが有ると負荷抵抗には平滑された電圧波形のVdが掛ることになる。

オン素子と電流

導通素子と電流波形 三相のダイオードと電流波形を色分けして示した。三相交流電流ia、 ibおよび ic は電圧波形が正弦波であるにも拘らず、矩形波電流となる。しかも導通区間2π/3の波形である。この電流波形になる訳は何が原因か?電源電圧波形が正弦波でありながら、各相電流波形は急峻に直流電流値Idに立ち上り、一定電流のまま2π/3流れて再び瞬時に零になる。この原因はすべて直流負荷側の(平滑)リアクトルLの『エネルギー』貯蔵に関わっている。その『エネルギー』には決して質量等関係しない事を物理教育で指導しているだろうか。この『エネルギー』は光の『エネルギー』と何も違わない『エネルギー』と言う実在物理量なのである。リアクトルは『エネルギー』に対して貯蔵するにも、放出するに、その変化に抵抗する機能が強い回路素子である。整流回路の整流作用が瞬時的応答でダイオードの優れたスイッチング機能が発揮される訳にリアクトルの特性が関わっていると観ることもできよう。

リサジュ―図形と瞬時空間ベクトル 上の図4の電源側の三相交流電流は特徴的な波形であり、電力供給側の電源にしてみればその電流が系統にどのような影響を及ぼすかを捉えておかなければならない問題であろう。その特徴的な波形であるから、単に線路電流波形を観測するだけでは物足りなくは無いかと思う。電源側でそれが三相整流回路負荷に因る物と観測できれば、観測・制御に有効であろうと考える。その電流波形の特徴をリサジュー図形で示してみよう。これは30年程前に手掛けて諸般の事情で頓挫した考えでもある。その後利用されているかどうかは、筆者は関わった事が無いので分からない。

スイッチングとリサジュー図形 電気回路現象をリサジュー図形上で判断・認識する手法。ここで取上げた三相整流回路は電源に線路インピーダンスが無い特殊な場合ではあるが、線路電流が特別な波形であることから、瞬時電力理論の空間ベクトルの軌跡をリサジュー図形で観測すれば六角形を示す。六角形と言っても電流ベクトル i は六角形の各頂点の静止ベクトルで、瞬時に次の頂点にジャンプし、六角形の線上には無い。電圧ベクトル e は電源電圧の角周波数 ω の一定速度で円周上の軌跡を描く。リサジュー図形はオッシロスコープの入力信号に三相ー二相変換情報を採りいれる必要があり、その基礎的理解が必要である。その意味を初心者でも理解できる解説が必要と思うので、別に改めて述べたい。ここでは、瞬時電力理論の空間ベクトルについては従来の電気理論ではなかなか理解し難いかもしれない。関連記事と30年前の資料を参考文献として挙げる。

(文献) 静止電力変換回路の基礎(1) (電力用半導体整流回路)  新潟県工業教育紀要 第7号 p.165.~179. (昭和46年)

この記事の中味で、測定データとして興味ある内容が載っている。誰も調べないだろうと言う意味で貴重に思える。第18図 ωoとα、βの関係 のグラフである。この単相半波整流回路は実用性の全く無い回路の実験データではあるが。ωoは負荷のL/Rで、驚いたことにこれが『時定数』であり、今年の回路解析の記事に通じている。単相半波整流回路はリアクトルの『エネルギー』の意味を理解するには良い回路だ。その記事を抜粋して載せさせてもらう。

消弧遅れ角の実験結果 既に『時定数』が回路動作を決めると考えていたようだ。

(参考文献) 空間瞬時ベクトルと交直変換器への適用 電気学会 電力技術研究会資料 PE-86-39 p.71.(1986)

(参考記事) 三相交流瞬時空間ベクトル (2017/04/07)

トランジスタのオン・オフ機能と理論の間に?

(2020/11/16)追記。この記事で述べた疑問。

トランジスタがスイッチング機能を持つ訳が理解できないという点である。実際に極めて高速の回路スイッチング機能を発揮する。上の図の(3)のような機能で捉えている。しかし、NPN型トランジスタのコレクタ側はダイオードのoffの向きである。何故そのようなダイオードoffの向きであり乍ら、onするのかと言う疑問である。コレクタ側はスイッチング動作時、吸熱現象による電圧電流の積の電力は負となる。この現象に対する理論は完璧なのか?どう考えても理解できない。そんな意味を述べた記事である。

突然理解不能の事態に遭遇する。電力用トランジスタは相当大きな電力でも自由に高速でスイッチング素子として制御可能な優れた機能素子である。半導体理論を余り学習して来なかったから、トランジスタのスイッチング機能に何の不思議も気付かなかった。

トランジスタとは スイッチング機能の優れたトランジスタの動作機能については簡単に解釈して納得していた。ところが不図気付くと大変な誤解であったのかと理解不能に陥った。

トランジスタとは トランジスタのスイッチング機能を利用する面から単純に感覚的に認識していた。その回路をベース側に電磁石コイル制御電流でコレクタとエミッタ間の接点制御回路として理解していた。スイッチング機能の理解にはこれで充分であった。しかしトランジスタのN型、P型半導体の接合体として捉えると、二つのダイオードが逆向きに接合された構造であることが分かる。コレクタ側からベースを通してエミッタへ電流を流すとすると、どう見てもコレクタ側のダイオードは電流の流れない逆方向である。どのような製造過程でN-P-N構造の半導体接合部ができるかは知らない。しかしN-P-N型の積層構造であると説明されているから、基本的にダイオードが逆向きで接合されていることになる。ダイオードの機能を解説する時、N型からP型へは逆向きだからダイオードは決してONして電流が流れることはないと言う。謎(p n 接合は何故エネルギーギャップ空間か)でダイオードの意味を考えたので、トランジスタはどうかと考えて見た。

トランジスタはオンするか トランジスタのオン・オフする機能の原理が分からなかったことに気付いた。

オンするかオンするか トランジスタに印加する電圧の極性でスイッチング素子としての機能が働くかどうかが分からない。考える頼りはダイオードの機能であるPN接合とそこに掛かる電圧の極性だけである。難しい量子力学の電子運動論は、自分にとっては、理解できる範囲を超えているから無理である。上の①,②と③の各場合の印加電圧の極性でどうなると考えれば良いか。

③が何故オンするか 何故オンするか不思議だ。

何故オンか?何故オンするか 一通りそれぞれの場合のB-C間に掛かる電圧Vbcを考えて見た。Vbcが正ならコレクタ側のダイオードはオンすべき順バイアス電圧である。①と③はB-E間はオンである。②はB-E間が逆バイアスでオフである。さて、①は勘ではオンすると思うが実験してみないと。エミッタ電流と逆向きの兼ね合いでB-C間を通る導通か。②もB-C間での導通のオンになるか。従って①と②はスイッチング機能はないことになる。問題は③が何故スイッチング機能を発揮するかである。理論解説では、ベース電流に対応するエミッタからの注入電子がp型半導体のベース領域を通過中に殆ど90%以上がコレクタ側に注入されるとなっているようだ。それがB-C間の逆向きダイオードの逆流電流を可能にすると説明されている。そんなダイオード機能の逆向き電流を流す理論はどこから生まれたのかとても不思議だ。どんな解説でも、ダイオードの本質的原理を打ち消すようなことだけは言って欲しくない。仕事が無い(1939/12/01 舞鶴鎮守府へ?職歴も書けない故)哀しさから時々、御免なさい(お恥ずかしいことです)。P-N junction 内のエネルギーギャップが解釈の要になろう。『電荷』ではなかなか理論の矛盾を取り除けない。現在まで科学漫遊の旅を経ても、特別研究対象と言える専門もなく、光量子の空間エネルギー分布概念や三相交流回路の瞬時空間ベクトルと何とも取り柄のない始末に負えない存在の浮遊体のようなままに在る。少しトランジスタのスイッチング機能のエネルギーに特化した見方を展開してみたいと思って筆を置く。

光に関する記事 しばらく離れていたが、大事な知って欲しい光の概念がある。もう一度まとめてみたい。

謎(p n 接合は何故エネルギーギャップ空間か)

(2022/07/13)。訂正。大きな間違いに気づいた。pn接合のエネルギーギャップが逆であった。現在修正中である。N型半導体側が高エネルギー領域で、P型半導体側が低エネルギー領域であると気付いた。この事で、他の記事にも多くの訂正が有る為、訂正にはしばらく時間を頂きたい。

『エネルギー』の存在形態を尋ねる旅。半導体はエネルギー変換制御に欠かせないスイッチング素子である。電力制御とは『エネルギー』制御である。三相交流回路の瞬時空間ベクトル解析で、スイッチング機能を回路定数サセプタンス化して解釈する意味を考える。その基礎考察で半導体の意味を理解したい。電力系統のスイッチング機能を担う半導体のp n 接合 とはどんな物理的意味を持っているかが分からない。その動作原理を『電荷』に頼れないとすれば、『エネルギー』に頼るしかない。専門家は良く解って居られることだ。しかし私は理解できないから困っている。何とか、まとめ に結論と覚悟した。

‐下のエネルギーギャップの図で、Diode のエネルギー分布が逆であった。‐

以下に、訂正図を挿入。

ダイオードのpn接合面で、『エネルギー』の分布状況が逆になる。それは、半導体の前の真空管時代で、二極管が検波機能を担っていた。その陰極側とダイオードのN極側とが同じ意味を持ったいると解釈できる。整流機能要素の原理 (2022/01/04)で訂正で示した。その意味から当然 N極側が『エネルギー』レベルが高密度である事になる。だから、下の エネルギーギャップ(訂正)になる。

『エネルギーギャップ』と『電圧』の物理的概念関係。 p n 接合の意味をダイオードを例に考えた。p型半導体とn型半導体の接合部にどんな現象が起きるのか。pn接合部のエネルギーギャップの電圧分が電源電圧との極性とによって、負荷側の回路空間に及ぼすエネルギーギャップとの間の関係でダイオードのオン、オフが決まる。エネルギーは高密度部から低密度部へ流れると考えたいが、乾電池に蓄えられる『エネルギー』は内部では消耗しないで、必ず外部負荷を通して消費する。その訳も重要な意味を秘めているのだ。乾電池の『エネルギー』の供給機能も、決して『電荷』では理解できない現象である。『電源電圧』という意味の物理現象もおそらく今までの物理学理論では説明できない筈だ。それが『電子』では電気回路現象の物理的意味を解釈できないという事である。『電子』概念から離れない限り、電気回路現象を理解できないという事だ。電源端子に現れる『電圧』が回路空間内に生み出す『エネルギー』の分布は結局回路空間構造の回路定数 C[F/m]、 L[H/m] によって決まる現象と理解しなければ、端子電圧の意味さえ理解できないのである。『電圧』という単純と思える概念さえも、その本質の物理的意味を理解するには『エネルギー』の空間に展開する現象を深く認識しなければ理解は無理である。(新しく書き換えた。)

まとめ 過去の記事をまとめて確認しておきたい。エネルギーギャップという意味に至るまでの過程も見たいから。最近の記事から古い記事の順で。単1乾電池もエネルギー貯蔵庫で、そのエネルギーギャップが内部で炭素陽極と亜鉛陰極間に保持された状態と言える。電池自身が、その内部の『エネルギーギャップ』によって、外部回路空間へ『エネルギー』を放射する物理的機能を保持した要素という事である。しかも陰極電線路空間側への放出によって。

(2019/04/02)半導体追加。

  1. 半導体とバンド理論を尋ねて (2018/05/14)
  2. トランジスタのオン・オフ機能と理論の間に (2o17/05/23)

半導体とエネルギーギャップ

  1. ダイオードの機能 (2016/09/17)
  2. 電気回路とスイッチの機能
  3. 物質のエネルギー準位
  4. 問答実験
  5. 半導体とバンド理論の解剖
  6. トランジスタの熱勘定 (2013/01/30)

電圧とエネルギー

  1. 電圧ーその意味と正体ー (2016/05/15)
  2. 電池電圧と『エネルギーギャップ』
  3. 電池の原理を問う
  4. 電圧ー物理学解剖論 (2011/12/14)

 

 

ダイオードの機能

歴史をひも解けば、二極真空管から鉱石検波器を経て半導体のダイオード更に三極のトランジスターが発明・開発されて現代の情報化社会に繋がって来た。半導体というシリコン、ゲルマニュウム元素との組み合わせで照明のLEDと科学技術に支えられた生活環境に生活している。その科学技術を支える科学基礎理論がある。その理論構築の根底を成す基礎概念に『電荷』がある。長く科学技術とその基礎理論の意味を考えて来たが、どう考えても『電荷』だけは自然科学理論の基礎概念としての基盤を成す物理量として実在するものとは考えられないと言う結論になる。ダイオードやトランジスタを電気回路のスイッチング素子として取り扱う電力変換技術の観点から、最も簡単なダイオードの半波整流回路を取上げて、その回路での『電荷』の意味を考えてみようと思う。昔パワーエレクトロニクスという半導体技術を東京工大、宮入研究室で半年ほど勉強させて頂き、またアメリカの本から教えられ、その技術の眩しさに興奮し、その回路技術の基礎を学習したことがある。しかし『電荷』の存在を疑うようなことは意識の片りんにも上らなかった。当然ながら今のような『電流は流れず』などという自己(電流に頼りっきりの電気回路論の信奉者)否定の電気現象解釈など全くなかった。『電荷』無しには電気回路を解析することなど不可能であった。それが何故今その『電荷』を否定することになってしまったのか。世界の先人が築き上げて来た学術理論の根底に異議を唱えることは哀しいが、何も人と争う事でもなく自分の自然観に忠実である以外道はないので止むを得ないかと思う。

(2018/10/11)訂正追記。以下の単相半波整流回路に因るダイオードの機能の解釈は不適切な内容であった事に気付いた。回路はそもそも電源側の直流偏磁現象の為整流機能がうまく働かない。回路が単純だからコンデンサの電荷概念の否定の説明を兼ねての心算が大きな誤算でした。ダイオードのスイッチング機能として、pn接合で n側が p側よりエネルギーレベルが高い事に因るエネルギーギャップがダイオードのスイッチング機能の基になっている。このエネルギーギャップとスイッチングの関係は謎 (p n junction は何故エネルギーギャップ空間か)に説明があった。

(2018/11/05)追記。ようやく決まったので以下に追記する。

整流回路 

図1.整流回路図1.整流回路。 単相全波整流回路を取上げて、ダイオードの機能を考えたい。4個のダイオードを単相交流電源に繋ぐだけで直流電圧が得られる。コンデンサを繋げば比較的一定の直流電源になる点で多用される。この回路表現は負荷側からの直流電源として見る場合には有効かもしれない。しかし、ダイオードの動作機能を考える時、初めて学習する人には分かり難いかもしれない。

図2.回路と表現

図2.回路と表現。 図1.の回路の表現を変えてみた。負荷の電源としてでなく、ダイオードの動作を考える回路として分かりやすいかと思う。①の回路を見れば、ダイオードDaとDcおよびDbとDdがそれぞれ逆向きに交流電源に繋がれているから、電源短絡のような事故は起きないと分かり、安心出来る回路と理解出来よう。後はどのように交流電源電圧を負荷にダイオードのスイッチングで印加するかの解釈である。

ダイオードのスイッチング機能

図3.オン・オフの疑問。 (この記事は誤解があり、修正しなければならない。)ダイオードDaとDcが逆向きに繋がっている。交流電源電圧vが図の極性の時、DaがオンしてDcがオフになる。何故そのようになるのか?ダイオードDcがオフなら、ダイオードDaに電圧が掛らない筈だからオンする理屈が見えない。ダイオードDaの陰極側のn型半導体は電位的には宙に浮いている筈だ。しかし、普通は何の疑問も持たずに、ダイオードDaがオンするから、当然Dcはオフになると解釈して安心する。もう一対のDbとDd側からの関係で決まるかと考えても疑問は晴れない。ダイオードのスイッチング機能で、技術感覚では単にスイッチで置き換えて違和感もなく動作を理解する。しかし、厳密にはダイオードのpn junction 内部ではオン・オフの切り替え時にエネルギーの処理に時間が掛る筈である。その間には二つの逆接続ダイオード間で、微妙な切り替え動作が起きている筈と考えたい。その微妙な切り替えが極めて安定に済む点がダイオードのスイッチング機能として優れている処と考える。ダイオードのエネルギーギャップの処理が自動的に安全に働く意味にその機能の優れた点があるとして理解したい。このダイオードが切り替わる過渡状態を転流区間と言う。その時如何にも電源短絡かとさえ見えるが、オフする側のダイオードは逆バイアスによりオフ機能がより強く、速く働くと考えたい。

ダイオードとスイッチ。

 

図4.ダイオードとスイッチの機能。 

電力回路の回路技術では、意識としてはダイオードをスイッチと置き換えて解釈する。ダイオードは僅かな電圧降下を持つがスイッチはそれが殆ど無い。ダイオードは電流が一方向しか流れないがスイッチは両方向に流れる。その違いはダイオードのpn junction 部の内部エネルギーギャップに原因がある。ダイオードの自動的なオフ機能にその優れた特徴がある。実際の回路で考えると分かろう。

スイッチングと回路動作

  図5.スイッチングと回路動作。 ダイオードの動作機能をスイッチで置き換えることなど実際にはできない。しかし回路のスイッチングの状態を理解するには、ダイオードの代わりにスイッチで考えるのが便利だ。スイッチのオン・オフを制御してダイオードのような電源電圧の処理を行う事など無理である。だからスイッチで整流回路を表現するのは理想論としての表現法である。その上で、スイッチの電流方向がダイオードと同じ一方向にしか流れないとの動作で捉えたものである。ダイオードのオン・オフは負荷によってその状態が決まる。3つの場合に分けてスイッチングを示した。

1.純抵抗(R)負荷。 実際は電気配線があれば、厳密な純抵抗など無い訳である。電線は分布回路であるから。しかしそれは無視して大まかに考えて純抵抗負荷とする。この場合は電源電圧の正負の切り替わりと同時に、スイッチが切り替わる。電源電圧の極性が図のように正の時、スイッチSaとSd(ダイオードDaとDdがオン)する。次に半サイクルではスイッチScとSb(ダイオードDcとDb)がオンする。だから負荷端子にはその時の電源電圧がスイッチのオンに依って、そのまま現れる。それが整流された直流電圧となる。この時、電源側から整流回路を見れば、単に抵抗回路に電圧を掛けたとしか見えない。

2.誘導性(R-L)負荷。 少し直流回路に誘導性のLが含まれた状態である。スイッチの切り替わる時刻が電源電圧の正負の切り替わりより遅れてスイッチングが起こる。負荷の誘導性のエネルギーの吸収・放出が電源電圧位相から遅れて現れるためである。その負荷のLのエネルギー処理のためダイオードが電源電圧に逆らって、オフ出来ずに遅れるのである。直流電圧値は低くなる。

3.純誘導性(L)負荷。この回路状態は無意味である。

以上が書き換え内容であり、御迷惑と混乱をお掛けして申し訳ありませんでした。

以下の(#)印区間は書き換え対象の前の記事であるが、一部「電荷」についての解釈は重要であるので残したい。

(#) 半波整流回路。 何か昔に工作した覚えの有る回路だ。ダイオード一個を使ったスイッチング回路を考察の題材にしてみよう。

%e5%8d%8a%e7%ab%af%e6%95%b4%e6%b5%81%e5%9b%9e%e8%b7%af半波整流回路 コンデンサへの突入電流を避けるためにリアクトル l を使う。普通は抵抗を使うが、電気回路要素の3つを取り入れようかと思った。回路要素のそれぞれの値で、回路動作も変化する。それぞれの電圧、電流がどのようになるかは、この図からは決まらない。なお物理現象として回路解釈をしようとすれば、電流や電圧では表現できないのであるが、電気技術論として解釈するより方法がないので、電流、電圧での解説となる。『電荷』概念の矛盾を論じようとするのに、『電荷(質量を持った電子)』の逆流としての電流(質量はないのか?)を使うとは、論法としてそれこそ矛盾だと非難されるであろうが。実はこの回路の考察はクーロンの法則を斬るで自分の宿題にして置いたものでもある。

 

正の『電荷』と負の『電荷』の二極性 世界の科学理論は二種類の『電荷』の物理量(クーロンの物理単位)に基づいて構築されて来た。しかし電気回路の電流においては『電子』という『電荷』と『質量(これは殆ど理論では無視されている。単に『電荷』だけならそれで良いが電子となれば質量も無視できない筈と思う)』を保持した素粒子が金属導体などの中を流れると解釈する。その電流では不思議なことに、正の『電荷』は必要ではない。電気導体の中を観察できれば『電子』が流れているかどうかは納得できる筈だが、それは無理であろう。二極性論とでも言えば良いかと思う程、人の思考方法に馴染みやすいのが二つの対極的概念を掲げて、比較する方法のように思う。人間の思考における『事象の分析法』では、何かの基準との比較によって自分の立ち位置を理解するのが分かり易いのではないか。他の人より収入が多いか、少ないかで考え易い。一般的には「常識」という社会通念が物事を評価する基準として便利に使われる。人が立って、自分の空間との関係を理解するに「上と下」という二つの基準も天と地の理解に容易に結びつく。ブラジルと日本で「上と下」を考えれば、宇宙の上下など、その二極性は無意味であることに気付くであろうが、日常生活では原理や真理など無関係に、感覚的に捉え易ければそれで十分立派な基準なのである。見渡せば『男と女(厳密には二極ではないが)』、『好きと嫌い』『暑いと寒い』など適当に二極で解釈するように思う。味覚は「甘い、苦い、酸っぱい、辛い」などと多極のようだが。そのように考えると『電荷』の正と負も、電気現象を理解するにも感覚的に人間の根底にある日常的思考形態に合致する二極性で捉えることに有効であるからであったように思える。

『負』 ←  [零]  →  『正』

数学の数の概念が拡張され『負』の数の存在を理解することになった。しかし実際には『負』のもの等実在しないのだ。[零]の発見という哲学論は難し過ぎるが、[零]とは『負』と同じく存在しないとしか見えない。前と後ろの距離を計っても、どちらも『正』の距離なのである。数学という方式に当てはめて考えると『正』と『負』が便利だと言うだけなのであろう。

半波整流回路の『電荷』。 半波整流回路の負荷側のコンデンサには『正』と『負』の電荷が蓄えられると解説される。

%e3%83%80%e3%82%a4%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%89%e3%81%ae%e3%82%b9%e3%82%a4%e3%83%83%e3%83%81%e3%83%b3%e3%82%b0ダイオードのスイッチング。

%e9%9b%bb%e8%8d%b7%e5%95%8f%e7%ad%94電荷問答。 電気技術者も直流電圧と言えば、プラス、マイナスの『電荷』で解釈する。しかし『電荷』が変圧器コイル巻線内で分離・生成するとも考えられない。『答え』としての結論は『電荷』でなく『エネルギー』がコンデンサ内に貯蔵されるのである。コンデンサの『エネルギー』が負荷で仕事、熱あるいは光エネルギーに変換されると考えれば、『電荷』が中和してそれらの仕事に変換されると言う曖昧な論理から解放される筈だ。『電荷』概念と『エネルギー』概念を並べて、どうかと比べて見ても、どちらも人の感性に頼る総合的な理解・認識が出来るかどうかの問題になるから、証拠を目の前に示して軍配を上げることには成らないであろう。雷が水蒸気の熱エネルギーの爆発現象だと言っても、電力工学部門の専門家による過去の研究実績から『電荷』否定の論法は否定されるかもしれない。科学技術、科学理論の歴史の重みが社会的「常識」の基準から抜け出すことには大きな障壁となっているだろう。結局は『電荷』を信じるか疑うかはそれぞれの人の自然現象との対話を通して得られる感性に依って決まるものでありましょう。ただプラスとマイナスの『電荷』が衝突して、あるいはコンデンサの『電荷』が放電して、「光(ランプ負荷抵抗などから)」が放射される時、光は何が光になったかまた『電荷』はどこに消えたのか、その答を皆が考えて欲しい。(#)

上に述べた「電荷」と整流現象の意味は、そのまま残しておく。

半導体とバンド理論の解剖

(2020/4/27)追記。力の概念と電気物理 (2019/5/21) 。

『電荷』を否定する。さて半導体の理論はバンド理論が担っている。ケイ素(シリコン)Siの共有結合で真性半導体の結晶構造を理解する。不純物元素により、P型、N型半導体となる。バンド理論で重要なエネルギーレベルの指標に『フェルミレベル』と言う概念がある。何か電子の存在確立が50%のエネルギーレベルをフェルミレベルと解釈するようだ。『電荷』を否定する立場から考えれば、そんなフェルミレベルの意味が理解できない。それは、技術的な半導体製造過程で具体的な設計に重要な役目となっているだろうか。半導体の特性決定に『フェルミレベル』を役立てられるかの問題である。 半導体に関する解説書が書店には沢山そろっている。「バンド理論」の解説である。しかしその意味するところが理解できない。理解できないような筆者がバンド理論を解剖するとはどういうことかと訝しいでしょう。その事を少し素人なりに解剖してみようと思う。理解できないなりに、昔学習に努めた。例えば、オックスフォード物理学シリーズ5 触れ合う原子ー液体と固体の物理ー 三宅彰訳 丸善株式会社 (ATOMS IN CONTACT  B.R.Jennings and V.J.Morris) 等を読んだが、全く自分には理解するだけの能力がない。

半導体結晶とenergy band 半導体結晶構造とエネルギー順位。 半導体素材はシリコンSiが主体であろう。教科書的には外殻の荷電子の数が4個で、立体空間的にダイヤモンド構造を成す結晶体と考えている。その構造を平面に表現できないが、右①のような平面図形で教科書には表されている。シリコンだけの純粋な結晶は絶縁体であろう。そこに不純物が含まれると、導体と絶縁体の中間の電気伝導特性を示すようになる。不純物の混在結晶で、半分導体に近い特性を示すという意味で半導体と名付けたのだろうと考える。そのダイヤモンド結晶の不純物により、結晶構造にひずみが生じる。上の①ではホウ素Bを不純物としてシリコン結晶内に、ドーピングさせた場合の様子を平面図に表した。・・が電子同士が対を成す『共有結合』を表す。炭素結合の秘め事に関連論。原子同士を結び付ける力は磁力であり、エネルギーの回転流であろう。電子の『電荷』等は存在しないのである。さてホウ素Bが結晶に混在すると、電気特性が何故変化するのだろうか。教科書の説明は、ホウ素の最外殻電子が3個で、結晶構造に電子の欠損が生まれ、その欠損部は丁度電子の穴、正のホールと看做せると解釈する。その電子欠損部に向かって、隣の電子が移動すると考えるようだ。その時、電子が逃げたSiに電子の欠損部が移り、また次の隣から電子が移って来ると考えるようだ。次々と電子の移動が起こり、それが電流として半導体の特性を示すと解釈するようだ。電子の移動は電荷間の電界に因る以外は不可能である。どんな電荷分布により、電子を移動する電界が生じると解釈するか。この電荷移動については力学から見た電流矛盾で考えた。ホウ素が混在しても、電気的には原子の電荷は中性の筈である。

半導体と回路素子 半導体と回路素子。 現在の科学技術を支えている基本が半導体製品である。送電系統の大電力制御の半導体製品から、pcのcpuや情報端末まであらゆる基本製品が半導体に支えられている。なかでもその基本となる幾つかを拾い上げて、半導体の特性とその解釈理論を考えてみよう。簡単な製品で、a diode、b transistor、c LEDを取上げて考えてみよう。

diode 。 最も単純な半導体機能はダイオードにある。カソードKに対してアノードAが高電位になる順電圧がかかると、ダイオードはスイッチオンで、導線で繋がったとみれば良い。電源電圧が逆になれば、ダイオードはスイッチオフで、回路が遮断される。こんな電気的動作、スイッチング動作を自動的にダイオードが電圧の逆、順方向を判断して、自動的に切り替える特性を備えている。こんな自動制御機能が半導体の優れた基本特性となる。このダイオードで、電気回路のエネルギー流を一方向だけに切り替える pn 接合の結晶構造の意味をどのように捉えるかである。それが何故かの『疑問』であり、『問答』の原点である。ここで視点を変えて、セレン整流器に触れておこう。古い整流器としての実績がある。調べると、セレンSe(99.99%以上の純度)はp型半導体とある。セレンは周期律の酸素の列にあり、6価であるから結晶構造はダイヤモンドとは異なるだろう。セレン整流器はセレンに錫ーカドミュウム混合体を吹き付けて整流作用を作り出していたようだ。この場合も、半導体のスイッチング機能としてはシリコンダイオードと同じ原理であろう。整流作用の解釈には、幅広い観点からその本質を見極めなければなるまい。

transistor。 次に能動的制御性を備えたトランジスターを考えてみよう。b 図にそのnpn型を記した。そのトランジスターと言う電気回路素子は、特性としてp型のベースBからn型のエミッタEへの信号(普通電流と言う)供給を制御すると、コレクタC側の負荷への供給エネルギー量(出力信号)を自由に制御できる機能を持った素子である。簡単に電流制御半導体素子と言えば良いのだろう。しかし、このトランジスターの空間構造がnpn接合になってはいないのだろう。n型半導体にp型半導体をドーピングして製造されているのじゃなかろうか。三層構造でなく、ドーピングの二層構造ではなかろうか。もし内部接合部の構造が明確に三層のnpn型に構成されているなら、基本特性は2個のダイオードを逆接続しても得られる筈だ。そんな単純なpn接合には決してなっていない筈だ。コレクタ側の接合はダイオードの逆バイアスとなる。だから、ベースーエミッタ間を制御しても基本的にはコレクターベース間は逆バイアスで、ダイオード基本特性から決してスイッチオンの状態には成らない。即ち負荷制御は出来ない筈である。トランジスターの科学技術は現代社会の全てを支える根幹を成している。しかし、その科学的理論は極めて曖昧な論理が世界を支配している。

LED。 三つ目に発光ダイオードを取り上げよう。中村修二氏の功績で、青の光源が得られた。窒化ガリウムGaN系で光の三原色の一つ青色が得られ、三原色が揃ったと言えよう。そのLEDの半導体構造がどのようになっているかが良く分からない。製造過程がどのように成されるかが分からないから、その出来上がった完成LEDの接合部の空間構造の接続状態を認識できない。しかし、pn接続の間にドープ発光不純物(?)が有る訳でもなさそうだ。カソード(n型)基盤の上で、p型アノードの近くにドーピングされているのかと思える空間構造だ。この発光分子材がどのように電源供給エネルギーを吸収して、一定の周期で放射する発光エネルギーに変換するのかが発光色の周波数となる訳である。エネルギー変換機能の詳細は発光物質のエネルギー貯蔵・放射特性で決定されると観て良かろう。白熱電球のフィラメントにタングステンが優れている訳は素材の蒸発や加工性エネルギー変換効率など様々な要因から利用されて来たと同じく、LEDの場合もその素材の発見に掛かっている訳で、分子構造等の空間的エネルギー変換特性は中々捉え難かろう。理論で示すことが難しいのである。技術の利用は理論に関わりなく進展する。殆どの科学的発見は常識的理論から導き出されて来ただろうか。

思考実験。 暗中模索の中で、手掛かりを得たい。半導体とはどんな性質なのかを探りだしたい。決まり切った解説からは新たな手掛かりを得ることは難しかろう。少しでも無理に物理的意味を捉えたいとすれば、上に考えた『疑問』を具体的にすることかと思う。問答実験で別に取上げる。