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時定数から観る電気現象

まえがき 気軽に使っていた電気回路の時定数が余り一般的な常用概念で無いようだと気付いた。検索で調べると、過渡現象での応答時間としての意味が中心となっているようだ。オペアンプの電子回路で重要な意味を持っている。序でに古い学術用語集の電気工学編と物理学編を開いてみた。驚いたことにそのどちらにも『時定数』は載っていなかった。電気回路の角周波数ωの意味は?の記事が良く見られている。その訳が『時定数』を使ってインピーダンスを表現している事かな?とも思えた。商用電源周波数ωとの関係での認識は余り無いようだ。ところが少し考えてみると、自分でも意味が分からない事があることに気付いた。そこで、正弦波交流回路での電気現象を時定数に着目して、少し詳しく考察してみようと考えた。伝統的に完成した電気回路解析に時定数を導入すると、また新しい現象の意味が観えて来るように思う。時定数は電気回路要素によって決まる数値であるから、回路の特性評価はその値でほぼ決まる訳で、交流回路解析に利用しないのは勿体ないであろう。そんな感覚で求めたのが等価回路変換の定理でもある。

電気回路実験 こんな実験をしたいと思った。回路要素の値をいろいろ変えて確認したいと。L とC の値は丁度50Hzで共振する値である。R=0で本当に共振するかな~?と思いながら。

時定数とは? 電気回路の中でも余りにも根本的な事だから、物理実験と思ったが、それも相応しくなかったかも知れない。この回路を例にして議論を進めたい。

時定数とインピーダンス 電気回路は例題の図のようにL-R-Cの3つの要素で解釈する。しかしそんなに実際の回路は単純ではない。例えば電気のモーター負荷を考えれば、回路要素で表現するのも難しい。抵抗分Rは巻線の分は測定できるが、実際の動力としてエネルギーを消費している消費電力分を評価するには抵抗値として解釈するが、そんな抵抗がある訳ではない。暑い夏に使う『クーラー』はモーターが冷媒を圧縮する動力の『エネルギー』を利用する家庭電化製品としてお馴染である。今年の日本列島はまた一段と酷暑の様相を帯びている。世界的傾向でもある。便利な『クーラー』は地球加熱機でもあるんだよね。そのエネルギー変換器(電気エネルギーから熱エネルギーへの)の回路要素はやはり抵抗で等価的要素と看做す訳である。回路に在る抵抗とは少し異なる意味を持っている。そんな動力の等価抵抗をも含めて、回路要素の意味を捉えるには、時定数と言う技術概念が便利であろうと考える。そのインピーダンス表現については、電気現象と三角関数に述べた。

時定数と電気特性 回路要素と時定数の関係について、少し考え方と意味を見直さなければならないと思う事がある。今まで、回路要素の次元から無意識的に時定数を捉えて来た。その意味は次のようなものであった。しかし、①,②,③に対して④のようなインピーダンスから得られる時定数まで含めると、今までのような意味だけで単純に解釈できないようだ。

回路と時定数 初めに挙げた実験回路の回路要素の組み合わせでその回路の時定数を図1のように考えていた。①、②および③の様に捉えていた。②のT=RC [s] は積分回路に使われるなど馴染みの時定数である。しかし、正弦波交流回路のインピーダンスとの関係で特別な意味を持っているとは考えていなかった。それが前の記事で述べたように、④のような回路要素R-L-Cの場合には、T=RCと言う定数には余り重要性が観えなくなってしまった。その事を次のグラフで示す。

時定数Tと力率角φ 実験回路の要素値L=67.55mH 、C=150μFで、抵抗R=10 ΩとR=1Ω の二通りの場合の回路特性を計算した。今まで時定数が次元が時間[s]でありながら、正弦波形上では時間の意味を持っていなかったことに、その意味を理解できずにいた。時定数の時間をようやく理解できた。時間t=φ/ω=(arc tan ωT)/ω で時刻の時間に換算されることを理解した。その回路の力率角φと時定数を図2に表現した。電気回路解析上で、今まで隠れていた宝物を探し出したような気分に居る。電気回路が芸術に見える。横軸座標の変数にK={1-1/(ω^2^LC)} を選んだ。Kの範囲は 1から-1の範囲である。K=1の意味はコンデンサの無いR-L回路である。またK=-1の状態はリアクトルが無い、R-C回路である。K=0の場合はCとLのエネルギーの貯蔵容量が等しく、丁度位相反転の状態で、LとCの間でエネルギーの遣り取りがなされ、外部からは無効電力要素が観えない状態である。いわゆる共振現象状態にある。ただ抵抗負荷と観えるだけである。

L、Cと変数Kの間の関係『問答』 グラフの意味を少し説明する。K≧0の誘導性回路の場合のKの変化の意味。抵抗値一定、リアクトルL=67.55mHのままで、コンデンサCの値を150μFから変化させれば、Kは変わる。ではどのようにコンデンサの値を変えれば良いか?実は筆者も戸惑った。解答を得たが、しばらく『問答』として置く。ヒント:K≦0の負の場合は分かり易い。コンデンサの値を150μFのままで、コイルの値を減少して零にすれば良い。簡単で、コイルの巻線を解いて行き、コイルが無くなればL=0となる。その時K=-1である。頭の遊びにコンデンサの場合を考えてみましょう。この関係には、物理的考察の価値があるので別の記事とする。電気工学の『エネルギー』が空間の実在概念として重要であるとの意味を考えてみたい。

時定数と等価回路変換『問答2』 折角等価回路変換の定理を提唱した手前、この問題にその手法を適用してみよう。

等価回路変換 直列回路の要素が並列回路に等価変換できる。先に取上げた等価回路変換定理に従って変換したら、回路要素はL’、C’およびR’のようになる。『問答2』:L’ 、C’ およびR’の算定は課題としておきたい。(ヒント)エネルギーに対して、要素の抵抗分とリアクトル分は互いに関係し合っている。

エネルギー消費と未来予想図(苦い話) 科学技術の恩恵で、過酷な労働から解放され、時間的な余裕のある生活を予想図として描いて来た。しかし労働条件や生活環境は望んだほど良くならず、むしろ自然環境が人の制御できない過酷な状況を呈している。熱中症に気を付ける等と言うことは50年前には全く予想していなかった。それは誰も恨めない己自身の人間が創り上げた地球環境だから。昔の東京オリンピックの頃には春と秋の穏やかな四季を生活のリズムに過ごしていた。来る東京オリンピックが平穏な気候の中で成功して欲しいのだが。地球環境に関わる『エネルギー』とは如何なるものかを考えたい。その『エネルギー』の意味を理科教育で子供達に教えているだろうかと心配だ。電気エネルギーを消費することは、その人が消費するエネルギーと同じ量の『熱エネルギー』で海の水を釜(原子力発電所等の汽力(蒸気力)発電所の復水器)として沸かしていることを知って欲しい。その発電所の熱効率が43%程度で、半分以上が海の加熱エネルギーとして捨てられて、初めて電気エネルギーが利用できることを知って欲しい。さらに利用した『エネルギー』のどれ程かがやはり地球の加熱エネルギーに費やされている。異常気象豪雨は人間が過熱した海の温度上昇の熱エネルギーがもたらしている人工災害でもある事を。電気エネルギーを利用する人間の全ての人が知っていなければならない科学技術社会の基本知識である筈だ。理科教育の社会的課題でないか?