右は少しクラシックの高級懐中電灯だ。電源は単一乾電池4個直列に成っている。白熱豆電球が負荷だ。
右は単一型乾電池のある会社の放電特性の試験結果だ。乾電池と花一匁 (2021/01/13)のデータの意味が不思議で再び取り上げた。放電条件で、電池容量が大きく異なる結果を示す理由が分からない。
実際の懐中電灯がどの様なものかを調べてみたいと思った。懐中電灯の電気回路現象はオームの法則で誰もがよく知っている。しかし、それは回路に電流が流れるという科学技術概念に因った理解だ。電線に『電流』や『電子』が流れていないとの認識に立てば、そう簡単に分かったとは言えない。懐中電灯回路の日常に有り触れた製品でも、科学技術的解釈理論とその中の自然現象の本質とは違う。本当の物理現象は『電流』や『電圧』と言う科学技術概念ではその真相は分からない。自然現象の本質を理解するには『エネルギー』の流れで捉えなければいけない。それは既に教科書の解説理論と異なる内容になる。教科書は『エネルギー』の流れと言う認識では解説されていない。最近分かったと思ってまとめた記事がある。エネルギー流が電圧・電流 (2020/10/01)。その末尾に、【実験的課題】α<1の時。として疑問を残しておいた。今回その点で新たな認識に至った。
実際の負荷条件は殆どα<1の場合である事に気付いた。その為、右の図を修正しなければならなくなった。ビニル絶縁電線が屋外配電線路並びに屋内配線のFコード等として使われている。その特性インピーダンスZoの値が500Ωに近いように思う。ビニル絶縁体の比誘電率が2~2.8程度となればそんな値に近いかと思う。乾電池の回路での配線は普通往復の単線回路だ。冒頭に示した製品の内部を見た。そこに観える回路には何か電気技術感覚の優れた直感からの誇りが隠されているように思えた。電気回路の回路定数はその電線路の空間構造によって決まる。分布定数回路空間の世界 (2019/10/14) に算定式をまとめた。
ここには電線は使われていない。金属導体板で回路が構成されている。直流回路の導線がどの様な意味を持っているかが示されているように思えた。この回路構造で、導体が平板で伝送空間が広く、電線より回路容量 C[F/m] が大きくなり、その為『エネルギー』の伝送容量の増加が見込まれる。以前平板コンデンサ配線回路等と言う記事を書いたこと思い出した。今はもう懐中電灯は新技術やらで、LEDが使われこのような電気現象の原理を考える古き良きものが消えてしまった。ブラウン管テレビが消えたように。
ランプ定格。4.8V,0.5Aと豆電球に記されている。電源電圧を計ると無負荷時 6.4[V] ある。ランプ抵抗は 0.9[Ω]のテスターでの測定結果を示す。ランプ負荷時はフィラメントが高熱になって抵抗が 9.6[Ω]程度に成る。それは500Ωに比べればとても小さい抵抗値だ。負荷は定格容量 P=2.4[W]以上 となろう。
回路現象解釈。
(教科書)。教科書では、当然のごとく、『オームの法則』で解く。電源電圧V=4.8[V] 、抵抗R=9.6[Ω]なら、電流I= o.5[A] と『電流』が求まる。それだけで、負荷電力も直ちに計算できる。科学技術論としてはそれで充分で、それ以上の事は考える必要もない。直流回路では、電気回路の回路定数は考慮しない。実際には特性インピーダンス Zo[Ω]が負荷抵抗R[Ω]との関係で重要な意味を持っている。
(自然現象)。『電流』と言う貴重な科学技術概念の御蔭で、すべてが数式での論理性を持って解析でき、すべて教科書によって理解できる。この科学技術以上の事は世界の電気理論には取り上げられていない。ほぼ『電子』が『電流』と逆向きに電線の中を流れるとの解釈で専門的論理が完結している。そこには負荷にどのように『エネルギー』が電源から伝送され、消費されるかの意味が不明のままである。この単純な懐中電灯の電気回路で、『エネルギー』がどのように振舞うかをまとめた。
δp1(α=1の時の伝送エネルギー)を回路整合時の基準値と定義する。負荷抵抗がR=Zoの場合は、電線路伝送の『エネルギー』の分布量δp[J/m]がそのまま負荷に供給され、負荷反射なども起きない。この状態を回路動作の基準と定義し、その値をδp=δp1とする。
この場合が通常の回路状態と考えられる。負荷抵抗値Rが回路特性インピーダンスZoより小さい場合である。この1より小さいαの場合が通常の負荷状態であると気付くのに時間が掛かった。オームの法則での解釈と異なる、『エネルギー』流によってどのように認識するかの決断にも時間が掛かった。すべて実験で確認できる内容ではない。従って『エネルギー』と言う物理量がどの様な特性を持っているかを己の感覚に照らし合わせて、決断をしなければならない。これは科学論とは言えないかも知れない。
決断点。『電圧』は電線間のエネルギーギャップ δg[J/m]の技術概念である。そして自然界には決して『電荷』は実在しないという強い確信がその決断の原点となった。その事を纏めれば、電池のプラス側の電線近傍にエネルギー分布のδo[J/m]の滞留分を付け加えるしかないと判断した。その『エネルギー』は負荷への流れには関わらない。反射でもない。その分が負荷増分の『エネルギー』となり、マイナス側を伝送する増加『エネルギー』流となる。
伝送エネルギー δp = δp1+δo [J/m]
線路電圧 v= (δg/C)^1/2^ ={(δp-δo)/C}^1/2^ [V]
電流 I= ( δp/L)^1/2^ [A]
電力 P= VI = δp/(LC)^1/2^ = (1/α)δp1/(LC)^1/2^ [W]
となる。以上が決断内容である。
消費『エネルギー』が微弱の場合は、電源電圧保持『エネルギー』より少ない伝送『エネルギー』で十分である。負荷が要求する電力P[W]に対する伝送『エネルギー』分δp[J/m] では電圧保持には不足である。そこに流れない滞留『エネルギー』分布δo[J/m]が生じる事に成る。
伝送『エネルギー』 δp=αP(LC)^1/2^ [J/m]
電圧 v={(δp+δo)/C}^1/2^ [V]
電池放電特性。冒頭に掲げた放電条件で電池の『エネルギー』量が異なる訳が分かったとは言えないが、負荷が重くなるとプラス側導体周辺の滞留『エネルギー』が増加する。そのプラス側の分は負荷によって増加するから、その分の外部への放射損失が増えると考えたい。
直流回路の電気現象について。教育とオームの法則 (2020/09/06) で指摘した。その疑問の一部について、漸く満足の出来る『エネルギー』による解釈に到達できた。この自然現象を理解するのも、一般の方には難しいかも知れない。しかし、『電子』と言う科学常識論が誤りである事だけは間違いない。これからの理科教育と言う面で、とても大きな課題がある事を明らかにできた。それはみんなが『学問の自由』と教育いう意味を考える課題でもあると思う。