大学と基礎研究

はじめに

大学の研究は如何にあるべきか。基礎研究とは本来経済的利益を目指すものばかりではない筈だ。経済的競争に有効に働く結果に結びつくこともあろう。失敗の連続で終わり、有効な結果を得られなくても、失敗の訳を明らかにできれば、それも立派な基礎研究だ。新しい視点で研究をするため、常に疑問や不思議を感じ取る感性を磨いていることが研究者には求められよう。忙しさに紛れて、研究ができないこともあろう。しかし研究の芽は、道を歩いていても、ボーと空を眺めて居ても、突然閃くものでもあろう。それは日ごろ考えていることの証でもある結果として生まれるものであろう。今でも不思議に思えることがある。以前「参照基準の何々」という教育の指針の報告があった。本当にそれが教育者が参照にして教育をするというのだろうか。「過去の伝統を守って云々」とはいったい基礎研究をどのように理解しているのだろうかと疑わざるを得ない。『電荷』とはどの様な物理的実在か?と疑問にも思わないのだろうか。電流とは電子の逆流と言って納得しているのだろうか。今年になって、分布定数回路を取り上げ、自分と問答をした結果、疑問への答えの一部を得た。教科書の中身であれば、何も経済競争に役立つものとは言えないであろう。科研の競争に挑むようなテーマでもなかろう。そんな地道な研究こそ、企業では投資の対象としないから、大学で取り組むべき重要な基礎研究であるはずだ。高度な最先端の研究においても、理屈に合わない結果に悩むこともある筈で、その時に電荷に縛られては、折角の研究をも捨ててしまう危険がある。そのような場面で役立つ筈の研究課題ならいくらでもある筈だ。電荷を否定すれば、『イオン』とは何か?も大きな意味を持っているはずだ。今回も一つの電気回路の思考実験として課題を取り上げて提示したい。

電源は何故負荷状態を知りうるか。(まだ確たる結論に到達できていない。問答の「問」だけである。)

決して電流概念では解答を得られない問題である。50Hzの2線式の送電線路があると仮定する。その亘長を1500㎞とする。その亘長は正弦波波長のちょうど4分の1で、位相角90度分に相当する。電源電圧値が立ち上がりの丁度零の時、負荷端の電圧値は幾らでしょうか。その時の電圧値はちょうど負の最大値になっているはずです。電源電圧と負荷端電圧が同じくない訳である。これはオームの法則で解釈できない電気回路状態である。これも電気回路現象である。所謂分布定数回路として考えるべき問題となる。こんな問題も教育としては重要な基礎理論の問題なのである。実際は正弦波交流でなくても、直流送電であっても交流と変わりない同じ原理による基礎理論(それが未だ教科書にはない新しい認識)で解釈しなければならない現象なのである。こんな日常的な思考問題も、経済競争に何の役立つように見えなくても教育上は極めて重要な基礎研究の筈だ。電源と負荷端の電流は同じ値にはならないことがお分かりと思う。電力、電気エネルギーを供給する電源では負荷に応じて制御しなければならない。どのような制御対象の電気量・負荷状態を検知するのだろうか。実際の電力系統制御は問題なく現実に有効に成されている。何も問題は無かろう。しかし、その基礎理論が技術理論で、短距離の問題としては不都合は無かろうが、自然現象の本質を捉えていないと、教育上は誤ったことになる。電子が導線金属内を流れるなどの誤りになる。この教育上の問題は科学技術教育と自然現象の理科教育で、その取り組み方を明確に区別したものとしなければならない課題となる。電気物理現象としては、線路空間を伝送されるエネルギーの光速度伝播現象しかない。電源での制御対象は電圧値と周波数しかない。電流は監視量ではあっても制御対象にはならない。供給エネルギーが負荷の要求するエネルギーに対して不足すれば、発電機の回転数が低下し、周波数や電圧が下がる。電圧、周波数を一定に保つため、供給燃料や供給動力を制御する。制御するものは『エネルギー量』一つである。(2020/01/05)追記。この『エネルギー量』一つであるという意味で、単位のジュール[J]は物理学的定義に基づく量の概念であるが、良く燃料の量キログラム[kg]などと捉えるかも知れない。燃料はエネルギーに非ずで、認識していただきたい。

図1.電圧(エネルギー)の分布と伝播

電線路が長くなると、電圧も時間遅れを伴って、線路に沿って分布する。電源電圧vsに対して、位置 l ではγl[s]だけ遅れた波形となる。この意味は電線路が短いか長いかには関係なく、基本的に起きている現象である。そこに、電流がどのように流れるものかという問答が含まれていることでもある。電線に電流が流れるのか?という物理現象を問うことでもある。すべての電気現象の本質は空間を伝播するエネルギーの流れに基づく現象である。3kmの配電線路で、その送受電端間には裸電線でも、 10[μs] の時間遅れがある。電気物理としての現象は電源と負荷で同じ電流になるという理屈は成り立たないのだ。だから電源では負荷状態を如何なる訳で知りうるかとなる。このような考究は決して経済的競争の利益を伴うものではない。だからこそ大学での基礎研究として取り組まなければならないであろう。

電源と負荷間のエネルギー伝播・反射現象。

電気エネルギーは電線路空間を光速度で伝送される。電源は電圧と周波数を監視制御する。電圧は線路定数の静電容量C[F/m]によって、その伝送エネルギー流の線路長さ当たりの密度[J/m]は決まる。そこに光速度流によるエネルギーの往復・反射現象が隠れているのである。ここに辿り着くまでに電圧―その意味と正体―などで電圧の物理的真相を探った過程がある。電気回路の現象は電線路の特性インピーダンスと言う線路固有の定数が空間伝播エネルギー量を決め、電源は反復反射によるエネルギー分布の電圧を規定値になるべく制御するだけである。

負荷端エネルギー反射現象。

エネルギー反射はどのような仕組みで起こるか。電線路がC[F/m]と L[H/m]の間での繰り返しによってエネルギーが伝送されて負荷端に到達する。負荷が持つ電気的構造による特性値と電線路との特性値との間の伝送エネルギーの挙動が決まった或る関係によって引き起こされる筈だ。そこで例えば負荷抵抗の物理的構造特性をどのように解釈するかに掛かってこよう。抵抗の次元は[(H/F)^1/2^]=[Ω]で、基本的には抵抗内部構造も静電容量[F/m]と誘導容量[H/m]の組み合わせと見做さなければならない。これは予測としてのこれからの考察によって決まる内容ではある。抵抗値が大きいか小さいかはLとCの比率と見做せる可能性がある。それは科学的検証が得られる結果になれば、成功となる。『エネルギーの物理的特性』としての解明の課題と思う。大学の基礎研究として。それほど経費は要しない筈だ。

むすび

しばらく考えてみた。しかし負荷の純抵抗の意味さえまだその物理的特性を捉えきれない。止むなくこのまま未解決の基礎研究課題として筆を置く。抵抗と言う電気材料がエネルギーをどのような機能によって熱化し、さらに光として放射するか。そのエネルギー変換機能の物理的解明が課題である。本当の基礎とは難しいものと認識した。

(2020/4/16) 追記。やっと電気抵抗の物理的機能を捉えられた。 電気回路要素の『エネルギー』処理機能 (2020/4/12) 。

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