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瞬時電力算定式

本日の報告。瞬時電力理論は座標変換に因る空間ベクトルがその理解に必要である。しかし、その瞬時電力の『瞬時実電力』pと『瞬時虚電力』qは意外にも簡単な式で評価できる。

線間電圧・電流による算定式 実際の電線路の電気状態は線間電圧と線路電流で評価する。その一つの算定式を示す。

瞬時電力算定式 二つの線間電圧と二線路の電流のみから(1)、(2)式のように算定できる。

三相交流回路の瞬時電流分離

瞬時電力問答で瞬時電流分離を取上げた。その後三相瞬時空間ベクトルを、過去を振り返りながら再確認しようと考えた。しかし、単相交流回路現象でさえ、改めて気付くことが生まれる。単相瞬時空間ベクトルと瞬時値で回路電流の分離を考えた。この電流分離の解釈が三相交流回路に於いても同じ事であると分かった。それは瞬時電力理論のα―β座標の二相空間ベクトルの瞬時実電力、瞬時虚電力に関わる意味でもあった。二相空間ベクトル解説の前にそのことを報告する。

三相交流回路の電力

三相交流回路と電力 平均電力で言えば、図のように有効電力P[W]と無効電力Q[Var]で捉える。(注意)少し説明して置かなければならない事がある。一般的な電力ベクトル図では無効電力Qの値を誘導性で『負』容量性で『正』として取り扱うかの疑問がある。ここでの解釈では、誘導性負荷ではsinφが『負』であるから、Qは『負』として解釈しないと混乱するかもしれない。負荷変動の瞬時電力でない場合には、この平均電力で解釈すれば十分であろう。瞬時電力で解釈する場合は、三相の各瞬時電力の総和p=ea・ia+eb・ib+ec・icは瞬時実電力と言い、それは瞬時有効電力と瞬時無効電力の両方の電力成分を含んだものである。また瞬時無効電力は三相電圧、電流からは算定することが出来ない。三相各相の瞬時無効電力を検出することは瞬時電力理論によらなければ出来ない。瞬時虚電力と言う空間ベクトル概念を定義したことで初めて、各相の瞬時無効電力を算定できることになった。それは結局各相電流を瞬時有効電流と瞬時無効電流に分離することが出来ることが可能になったからである。負荷変動しない三相平衡定常負荷の場合で、瞬時電力理論の意味を適用すれば、三相有効電流と無効電流に分離することができる。三相交流電圧、電流(二相座標変換せずに)のみで有効・無効電流に分離してみよう。

瞬時実電力・瞬時虚電力表式 二相座標変換しないでの瞬時実電力と瞬時虚電力。

三相瞬時電力

三相回路電流の分離 電源電圧が三相平衡電圧の場合で、負荷も三相平衡定常負荷の場合には負荷電流を有効電流と無効電流に分離できる。

瞬時電流の分離 図ではa相電流iaの有効電流iap と無効電流iaqへの分離式を示した。ただし、sinφの符号は誘導性で負、容量性で正。

瞬時電力理論に因る分離

各相瞬時電流算定式 各相の電流を有効電流と無効電流に分離した表式である。有効電流は各相の電圧位相と同位相の電流であり、無効電流は電圧とπ/2だけ位相差の電流となる。単相回路での電流分離の手法がそのまま同じ方法で適用されることである。ただ、三相電圧・電流で算定する式に表現したが、元は二相座標変換の空間ベクトルの概念を書き換えただけである。ただし、Qは誘導性負荷では『負』である。それはsinφが『負』だから。

参考文献(*1)(*2)

 

参考文献

(*1)  赤木他、瞬時無効電力の一般化理論とその応用 電学論B103,p.483(昭和58-7)

(*2) 金澤 空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 電気学会、電力技術研究会資料PE-86-39,P.71.

花一匁

花一匁

三相交流電気回路には不思議がいっぱいある。瞬時空間ベクトルを考えると不図気付くのだ。当たり前と思う事が不思議に見えるから不思議なんだ。道端に咲く花一輪にも宇宙の不思議に負けない不可思議が囁いている。

空間ベクトル 何で空間ベクトルは描けるのだろう。技術って面白い。感謝しよう。

エネルギーとは何か―電力系統に観る―

エネルギーとは何かと検索する人がいる。確かに『エネルギー』とは何かと尋ねたくなる。それ程漠然としたものかも知れない。(挿話)例えば、光『エネルギー』を光の振動数で物理学では解釈しているが、光の何が振動すると言うのかに答えなければ、理屈としての物理学とは言えないと思う。だから光エネルギーと言ってもピンと感覚的に捉え難いことになるのだ。振動数で解釈するのは、実験的に光を計測、分別するにはそれしか方法がない事から来る科学的便法でしかないのだ。光は振動等していない。『エネルギー』の縦波でしかないのだ。『エネルギー』そのものが空間に実在して、それが光速度の縦波となって伝播しているのだ。少し途中で光の話を挿入してしまって筋に混乱を入れたかもしれない(挿話)。エネルギー政策と言えば燃料・電力を指すようだ。物理学では運動論のエネルギーや摩擦熱のエネルギー、生物学では植物や細胞の話に出てくるが具体的にはっきりしないようだ。食品ではカロリーと同意語を成すのか。同じ『エネルギー』と言う言葉にも使う人の所属する分野によってそれぞれ異なっているようだ。
電力系統の『エネルギー』 市民が日常的に接する『エネルギー』は電気エネルギーが代表的であろう。冬は石油ストーブの灯油も思い浮かぼう。灯油は自動車のガソリンと同じものであるが、感覚的には「熱」と『動力』の違いで受け取られるかもしれない。今電気現象の空間ベクトルについて考えている途中で、電力系統の全体像を市民感覚で捉えておいた方が、ベクトル解釈の話につながり易いかと考えてその『エネルギー』からまとめてみようと思った。

電力系統の『エネルギー』 電力系統には『エネルギー』の様々な意味が含まれている。みんなたった一つの『エネルギー』の実相世界である。自然科学や科学技術を認識するのに広く全体像を捉えることがとても大事であろうと思う。狭い専門分野からのみ考えると、一方的な見方に偏ってしまう危険がある。特に理論的に偏った具体性の無い場合には、気を付けたい。学校の理科教育を考えた時思う。昨年科学技術社会のエネルギーと運動力学(理科基礎)で同じような話題を書いた。エネルギーとは何かに答える一つの具体例として良かろうと思って取り上げた。発電所は水力発電所では燃料は要らず、水の水圧の『エネルギー』や運動の速度『エネルギー』で水車により発電機を回す。今は殆ど火力発電が主流となっている。燃料に核燃料や重油を使い、その発生する熱『エネルギー』で水を熱して、水蒸気の高圧で高温の状態を作り出し、それをタービン羽根に吹き付けて回転動力に変換し、発電をする。発電機で電気『エネルギー』に動力『エネルギー』をエネルギー変換して、超高電圧の電気『エネルギー』に変圧器で変換し、電圧と言う電線路空間の三本の導体構成で、『エネルギー』の伝送分布を作りだしているのである。電気『エネルギー』は光とほぼ同じで、電線路空間内を光速度で伝送されるのである。この発送変電電力系統は『エネルギー』の様々な姿で現れている、科学技術の粋を集めた機能設備なのである。核燃料から家庭のテレビを見る間の自然現象は『エネルギー』一つを利用する科学技術であり、すべて『エネルギー』の醸し出す自然の姿なのである。

世界を描く 熱と光と質量の間に在る繋がりを何に求めるか。質量と光は明らかに異なる『モノ』である。物理学的には、原子に光を照射すると外殻電子のエネルギー増加を来たし、電子運動『エネルギー』が増加する現象と認識するのだろう。何らかの原因で、その電子がレベルの低い準位に落ちると、その差の運動『エネルギー』を原子外部に放射すると解釈する様に思う。その『エネルギー』が光であると。プランク定数と振動数の差と言う解釈で考えるのだろう。厳密に論理性を追究しようとしても、目に見えない原子世界の事だから何故電子が光を吸収して運動『エネルギー』レベルが高まるのかも良く分からない。電子の主要な物理概念は『電荷』で特徴付けられている。光が電子の質量に作用するのか、電荷に作用するのかもよく理解できない。光の振動数がその解釈には重要な役割を担っているとして、電子の質量に衝突して電子加速を引き起すと言うのだろうか。その辺の詳細な解釈の理由付けが見えないのだ。世界に『電荷』など存在しないと考え、光は振動等していないと考えると、全く物理学理論について行けない頭になってしまうのだ。こんな科学認識では、科学の世界に通用する訳はないかもしれない。『電荷』も捨てて、『エネルギー』一つを頼りに考えると、質量も光も熱も皆基は同じ『エネルギー』でしかないのだと思わざるを得ないのだ。そんな思いで世界を表現したのが世界を描くの図になった。そんな思いを発変電および送配電線路空間で解釈をしてみた。電気回路は光現象と結び付けて解釈しなければ、その本質の理科教育には成らない。

単相瞬時空間ベクトルと瞬時値

(2020/06/10) 追記。ここで取り上げる空間ベクトル解析はやはり電気工学の解析手法の話になる。電圧、電流を電気現象の解析手段の基礎概念としての取り扱いとなる。それはあくまでも科学技術論としての論法である。その意味は電気現象を電気物理として論理性を追究する科学論とは異なるものである。電気回路の物理現象は決して電圧と電流では、その論理性を持って解釈することは不可能である。何故なら、電気回路のエネルギー伝播現象は決して電線導体内には無関係で、その電線路で囲まれた空間しか伝播しないのであるから。オームの優れた法則も電気技術としての回路解析手法であり、自然現象としての物理的論理性はそこには無いのだ。しかし技術的回路解析にはとても優れた、貴重な手法である事に変わりはない。現在の電気回路現象に対する筆者の認識を一言述べさせて頂いた。

はじめに。 瞬時電力理論(pq理論)は三相交流回路に対してその威力を発揮する。当該理論は電力エネルギーの制御・補償で、スイッチング機能を伴うなど、絶えず瞬時変動する負荷に対して、その電気現象の意味を捉えるに欠かせない理論である。物理的には電荷に基づく電流は流れずと言いながら、ここでも電流の解説をしようとする。昔pq理論に基づいて、電流の微細制御を論じた論文「電圧型PWM変換器を用いた瞬時無効電力補償装置の動作解析と設計法」(電気学会)電学論B106,323(昭61-4)もある。この論文の意義は変換器の半導体素子のスイッチング動作限界を明らかにし、変換装置の設計基準を示した点にある。しかし瞬時電力理論は単相回路に対しては特別有用とは看做されていないだろう。単相では、三相回路での空間ベクトル積で定義される瞬時虚電力の概念が得られないからであろう。電気工学の学習でも、電気現象理解の初歩では、オームの法則から直流、単相交流回路と学習が進み、インピーダンスベクトルや電圧ベクトルの複素表現法によって電気現象解釈の目標に到達したと成るのじゃなかろうか。遥か昔の30年も前の学校現場での教育内容であるから間違っているかも知れない。もし教育内容が昔のままであるとしたら、三相交流での瞬時空間ベクトル解析法との隔たりが大き過ぎるだろうと懸念する。単相交流回路でも、瞬時空間ベクトル概念に依る解釈法を学習する必要があろうと思う。従来の複素ベクトル解釈法は負荷変動の無い、平均電力回路現象の理解を目的にした方法である。今回少し単相交流回路で、瞬時値に対する瞬時空間ベクトル解析法として理解に優れているだろうと思う方法を考えたので、『単相瞬時空間ベクトル解析法』を提案する。電気現象も瞬時空間ベクトルとしてみると芸術的に見えるから不思議だ。今電気現象をこのように感じるのも、いろいろの電気回路の中で起こる『エネルギー』の挙動に常に注意してきた結果のように思う。初めて電気回路の魅力に取りつかれたのは、1970年頃にパワーエレクトロニクスに出会ったからである。Principles of Inverter circuits  by B.D.Bedford ,R.G.Hoft の名著によって、電気回路技術の深さに興奮を覚えた。同時に電気理論に教育的矛盾のあることをこの頃に確信した。ファラディーの電磁誘導則とアンペアの磁束発生解釈の間の埋められない溝を何故誰も指摘しないのかであった。『磁束は電圧時間積分で決まる』その基本原理を!その意味を知ったのが『ロイヤーのインバーター』(静止電力変換回路の基礎(2)新潟県工業教育紀要第8号、このインバータで単相誘導電動機の速度制御を行った)である。この回路の動作原理を知れば、誰でも電圧時間積分の意味を理解できる。アンペアーの磁束発生原理はどこかに飛んで行ってしまう筈だ。これは物理学原理の根幹を問う問題でもある筈だ。伝統理論に偏り過ぎた理科教育はもっと技術に寄り添わなければ、存在意義が問われる筈だ。

単相瞬時空間ベクトルの要点。 単相交流回路の電気現象の瞬時の状況をどう捉えるかは殆ど論じられて来なかったのではないか。電源電圧が正弦波の場合だけに限って考えてみた。従来はインピーダンスベクトルに対して電流が流れた時、各負荷要素に掛かる電圧分担分を基本的考察の拠り所としていた。今回提案する解析論は負荷に対して、電流を電源電圧と同位相の成分と90度位相差の成分とに分離して考えた点が特異な観点である。その二つの瞬時電流の算術和は勿論回路電流の瞬時値に等しい。負荷が変動する場合、変動瞬時では電流は正弦波ではなくなるから、その過渡状態では解釈上でも分離は出来ない。三相瞬時電力理論とは違って、単相では過渡時に電流を分離する威力を発揮できないきらいはあるが、今のところ単相回路ではそれも止むを得ないと考える。ベクトルを扱う空間は4次元の抽象概念空間である。電源電圧が角周波数に従って一定速度で回転する電圧最大値のベクトルとして捉える。回転電圧ベクトルに対して電流は空間的な位相差を持ったベクトルとなる。

4次元座標と電圧ベクトル。 4次元座標は3次元の直交空間座標軸と時間から成る。この空間は実在空間とは異なることは当然である。電線路導体の空間は実在空間であるが、この座標は電気現象を解釈するための抽象化した空間である。三相伝送線路の瞬時電力理論の三相ー二相座標変換への橋渡しの意味を込めて、α軸とβ軸で構成した。

vec-1%e5%ba%a7%e6%a8%99%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%9c%a7%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab座標と電圧ベクトル。 三本の直交した座標軸α軸、β軸およびγ軸から成り立ち、その単位ベクトルをnα,nβ,nγ とする。電圧ベクトルe は最大値Emの正弦波で、時間の原点ωt=0を-nβ方向とする。電圧ベクトルはα軸とβ軸の成す平面上を反時計方向に回転する。この電圧ベクトルeの回転速度はαβ座標面に垂直なγ軸上に電源周波数の回転角速度ベクトルωを定義することにより決まる。単相交流回路には電圧が回転する現象がある訳ではないが、その電圧波形が正弦波の場合では、正弦波の周期性から電気現象を空間ベクトルの回転として捉えると電気特性を理解し易くなるだろうと思う。その座標と回転基準ベクトルとなる電圧ベクトルの解釈基準を示した。

瞬時電流ベクトルと瞬時値。 エネルギー消費負荷の内部インピーダンスは外部からは分からない。特性不明の負荷の電気現象を知る手掛かりは電圧と電流の瞬時値しかない。その事から電圧と電流の関係を空間ベクトルとして認識しようと言う事である。電流の瞬時値を電圧同相分と直交成分に分離し、その関係を空間ベクトルとして表現した。

vec-2%e7%9e%ac%e6%99%82%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4瞬時空間ベクトルと瞬時値。 空間ベクトル値が計測できる訳ではない。計測できる瞬時値はα軸上に下ろした垂線によって示された値となる。電圧瞬時値はeαであり、電流はiα が瞬時値として検出できるものである。計測できないが電流値i(電圧ベクトルeに位相差φで追従するベクトルiの値)を解釈上二つに分離した空間ベクトル上での電流ipは電圧瞬時値の位相に同相の瞬時有効電流になる。さらに同様な分離電流iqは電圧と位相π/2だけ異なる瞬時無効電流となる。電流の空間ベクトルについて、線路電流の瞬時電流ベクトルiは負荷特性によって決まる力率の位相φで電圧との関係が決まる。位相φは正弦波電流の場合の意味であり、単相回路の瞬時変動負荷に於いては電流ベクトル i は残念ながら確定できない。

瞬時電流分離の意義。 電流を瞬時有効電流ipと瞬時無効電流iqの二つの成分に分離することの意義は何か?確かに従来の抵抗とリアクタンスによる電気回路解析法に馴染んだ解釈法からすると、回路要素に依らない解釈が正しいのかと疑問に思うだろう。電圧と電流と言う科学技術概念量の魅力はほれぼれするものである。しかしその概念が、『電荷』と言う実在しない物理量によって解釈されることから、実際の電線路空間内に分布する『エネルギー』の自然の眞髄に気付かない事から来る、余りにも数式に厳密性で依存する科学理論が社会的な問題を含んでいないかと、それが気掛かりである。電線路近傍空間の『エネルギー』は電気現象の根底で、空間の空間定数によるインダクタンスやコンダクタンスの過渡的現象を大きく受けているのである。そんな自然現象の意味を数式で捉え切れるものではない。だから、前回の記事瞬時電力問答で疑問を呈した「Ri^2^の不可解」での関係で、瞬時有効電力との位相の差の問題に答えなければならなかろう。実際の負荷は抵抗とリアクタンスに厳密に分けられる訳でない。負荷は負荷空間全体が一体としてエネルギー処理に当たっているのである。だからこのエネルギーは抵抗分で、このエネルギーはリアクタンス分と分離することを実際上は厳密に分けなくて良いだろう。単相交流回路の負荷内で、リアクタンスに蓄えられた『エネルギー』が時間差を持って抵抗に消費される現象と考えれば、電流を二つの成分に分けて解釈しても何ら矛盾はない筈だ。『エネルギー』にとっては抵抗もリアクタンスも特別の差はないのだ。また電源から監視する技術面で見ても、電源側に影響するかどうかで評価すれば良い事であろう。だからと言って学習しないで良い訳ではなく、抵抗とリアクタンスの『エネルギー』に対する基本的特性の違いは十分理解していなければならない筈だ。この電流分離の意味を、前記事の具体例でもう一度確認したい。その前に一つ注意しておきたい。瞬時電流ipやiqの値が分離計測できる訳ではない。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e6%9c%89%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81瞬時有効電流ipと瞬時無効電流iq。 電源電圧に対して位相角φの遅れの線路電流iが流れる。Vec.2のベクトル図で、α軸電流iαがこの電流波形iとなる。Vec.2はα-β二相座標でベクトル展開したものであるが、それは三相回路の瞬時電力理論との関係で単相回路の電気現象を考えるためである。この具体的回路例をVec.2のベクトル場に対応して考えると、線間電圧vを三相回路のα相の相電圧eと考えればよいだろう。その上で、瞬時電力理論の瞬時有効電力p=(ei)のベクトルのスカラー積で解釈すると、p=eα・iα +eβ・iβの内の第1項分のeα・iαがそれに当たる。しかしこの電力は有効電力と無効電力の両方を含むものである。そこに、単相回路の空間ベクトルと三相回路の空間ベクトルでの解釈上に含む違いの意味を考えなければならなかろう。Vec.2の瞬時電流でのipとiqが確かに有効電力と無効電力を分離している意味で意義がある。

瞬時電力。 電気回路で計測できるのは線間電圧と線路電流である。その瞬時値を観測・計測するにも方法が必要だ。電圧は2本の電線に高抵抗(ほとんど電流が流れない程の抵抗値)か変圧器を繋いで、分圧電圧を利用する。電流の瞬時値はやはり電線に低抵抗(抵抗値ほぼゼロの電圧降下値)か変流器(CTと言う電流変成器)で測定するしかなかろう。制御回路では絶縁が基本だから、Tr.とCTが使われよう。その信号を波形観測機器で観測できよう。先のVec.2の空間ベクトルとの関係を示さなければならない。線路電流iは、i=iα(Vec.2のα軸上の成分になる)である。電圧vはv=eα(Vec.2のα軸上の電圧成分)の意味である。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e6%9c%89%e5%8a%b9%e3%83%bb%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e5%8a%9b瞬時有効電力p_p・瞬時無効電力p_q

前記事瞬時電力問答では「Ri^2^の不可解」と疑問を取上げたが、同様にリアクトルの電力Lidi/dt[W]も同じ意味を含んでいる。ここでの電流iもVec.2のベクトル図では、電流i=iα(α軸上の電流)、電圧v=eα(α軸上の電圧)であることを了解して頂きたい。瞬時電力p=vi[W]は

p=v ip +v iq =p_L + p_R  [W]

と各瞬時電力の和で、電流分離による電力の和も各要素電圧による電力の和も当然ながら同じくpに等しい。当然ながら、無効電力も有効電力もその次元はワット[W]である。従来の電力理論で言う無効電力は瞬時値を論じてはいないから、平均値の無効電力はゼロワット 0[W]となり、単位[Var]で零ワットの意味を表記するのである。無効電力VIsinφ[Var]とその無用なエネルギー流の関わりの悪影響の大きさを表記するのである。ただし、V,Iは電圧電流の実効値であり、最低でも1サイクルの2乗平均の平方根値で算定する訳で、瞬時値としての捉え方はない。だから瞬時電力pの平均値はP=VIcosφ[W]となる。それは瞬時有効電力p_p=v ip [W] およびRi^2^[W] の平均値に等しくなり、無効電力分は結果的に、エネルギー量の評価量としては表面に現れないのである。だから無効電力評価単位を[Var]とする。電気工学を学ぶ初期の方がよく質問しているので老婆心いや老爺心で単位について説明を。なお電力の単位ワット[W]についても瞬時値表現としては意味に明確さが見えなくなるのだ。ワットは[W=J/s]であり、エネルギー量の時間微分値である。電線路空間を伝送する『エネルギー』の時間微分とはどんな概念と理解すれば良いか。電線路を伝送するエネルギーは送電端と受電端では距離が離れているから、たとえ光速度で伝送されるとしても、その離れた場所での空間のエネルギー分布は異なる。その事は電流についても、一本の電線であっても送電端と受電端の離れた点では等しくないのである。この辺の論になると所謂物理現象、電磁現象を論じる内容につながる。

電力ベクトル。

vec-3%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab電力ベクトル。 α―β―γ空間ベクトル場で単相交流回路の電力を考えてみた。従来は三相交流回路に対してしか瞬時電力(瞬時電力理論)を考えなかっただろう。その研究分野から離れて30年もたったから実際のことは知らないが。単相交流回路を4次元空間ベクトル場で、その電気現象の解釈を試みた結果、新しい電気工学ベクトル解析の一手法になろうかと思うので報告する。こんな基礎的な内容が学校教育の教科書の中味を探ると見えて来ると言う事が驚くべきことに思える。従来の電力ベクトル図では、有効電力P=VIcosφ [W]と無効電力Q=VIsinφ [Var]を直角三角形のベクトル図として解釈していた。Vec.3 の電力ベクトルでは、

有効電力p=2P=2EIcosφ =Em Im cosφ [W] 、

無効電力q=2 Q=2EI sinφ =Em Im sinφ [Var]

となる。有効電力の算定値pは平均電力Pの2倍値となるから、少し注意する必要があろう。無効電力までが三相交流回路の場合と同じように算定されることが不思議だ。勿論無効電力Q=q/2と言う電力が流れている訳ではないのだ。それは三相回路における瞬時虚電力と同じような意味を単相回路ベクトルの中に捉えることが出来ると言う意味で、新しい認識を得たと言えるのだろうか。なお、E(=Em/√2)およびI(=Im/√2)は電圧、電流の実効値である。

まとめと考察。 回路の瞬時電力pαはpα=eα・iα [W] で、有効電力と無効電力の両方を含む。このα軸上の電流iαは電流計で計る回路電流の瞬時値iである。vec.2のベクトル図で、iα=ip+iq であり有効電流分ipと無効電流分iqの両方を含んでいる。ここで論じた事をまとめる。

vec-4%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%8a%9bVec.4 空間ベクトルと電力(sinφの正・負に注意)。 単相回路の瞬時空間ベクトルを三相回路の瞬時電力理論と対比してみよう。電力ベクトルとして瞬時実電力に対応させて、電圧・電流のスカラー積p=(e・i)を計算すると、図の(6)式のように単相電力P=EIcosφの2倍となる。それはα相とβ相の二相分を計算したことになるからである。α相の単相分を計算すると、pαは(5)式の通り、単相回路の電圧と電流の積の瞬時電力となる。平均電力P=EIcosφに対しての2倍周期の正弦波電力となる。次に瞬時電力理論の瞬時虚電力に相当するベクトル積[e×i]=[×]+[×]を計算すると、q=2Qと従来の電力ベクトルの無効電力分Q=EI sinφ [Var]の2倍値となる。単相回路の場合はこの虚電力に関しては余り意味があるとは言えない事が分かる。三相回路では、瞬時有効電力は電圧電流のスカラー積で得られるが、単相のα相電力pαは有効電力と無効電力の両方を含んでいるので、有効電力と無効電力に分離することは出来ない事が分かる。しかし今回の考察で、単相回路の電圧と電流及び負荷力率角φから、空間ベクトル図上で有効電流ipと無効電流iqに容易に分離できることが分かった。Vec.4 図のp_p の(8)式およびp_qの(9)式である。具体例を挙げておこう。

%e5%9b%9e%e8%b7%af%e4%be%8b%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4具体例と瞬時値。 α相の単相回路で、電圧、電流の実効値およびその位相差角φが分かると、その回路の瞬時値は確定できる。『問題』波形図で、位相ωt=2π/3 の時の瞬時空間ベクトル図はどのようになるでしょうか。

単相回路を空間ベクトルで考える手法について論じた。電気工学学習での一つの解釈法になればと思う。一つ留意しておきたい。三相回路の瞬時実電力pとここで論じた単相回路の瞬時有効電力p_pおよびpαとの間の関係についてはまだ十分分かっているとは言えないかも知れない。