電気材料に磁性材料がある。変圧器の磁心やマグネットに使われる。その磁気特性の良し悪しが重要な意味を持つ。電磁気機械の性能を支配し、製品の利用度を左右するから。磁性材料の開発の評価にはその磁気材料のB-H特性が使われる。材料に掛ける磁界H[A/m]と磁束密度B[Wb/m^2](あるいは[T(テスラ)])で示される特性(B-H曲線)である。
資料を参考に描いてみた。
磁気特性とは? 磁気材料は大きく2種類に分けられよう。電力機器用の鋼板とマグネット用の物。マグネットの材料にネオジムと異方性フェライトを選び、ある会社の資料の特性を記した。マグネットの場合は第二象限のみの特性で評価するようだ。電力用の磁気特性はケイ素鋼板の古くJIS規格C2551のS23Fを選んだ。その3種類のB-H特性をまとめて描いた。
JIS規格は現在国際規格ISOなどに統合されている。JIS規格図表は電気工学ハンドブック(昭和45年再版2刷)による。マグネット用とケイ素鋼板の違いは保磁力Hc[A/m]の違いに在るようだ。マグネットは残留磁気Br(磁気H=0のときに残る磁界の強さ)がその特性として重要であり、環境で磁気の強さが減少しないために、保磁力の大きさが必要である。一方、電力用はB-H曲線の内面積の小さいくて、鉄損失が少ない方が望ましい。
鉄心磁束の発生原因 それを励磁電流と考えるべきでない。鉄心のコイルや変圧器の機能で、どうも励磁電流に固執した考え方の方が多いようだ。磁束とか磁場を電流が基になると言うアンペアの法則を基本に考えるからのようだ。起磁力H[A/m]が、電流の単位[A]に基づいているから止むを得なかろうが、それでは困るのである。②のように鉄心にコイルを巻いて、その鉄心内の磁気特性(B-H曲線)を説明しておこう。コイルの鉄心内の磁束Φ=AB[T]、ただし鉄心断面積A[m^2]とする。さてコイルに電圧vを印加する。磁束の変化する意味を理解するために、電源電圧の波形を正弦波でなく方形波とする。正弦波では、磁束量と時間の関係をB-H曲線上に捉える事が難しい。しかし電圧値が一定の方形波なら、磁束Φ(B)量と時間を比例関係で捉えられる(時間軸を縦軸の磁束密度と同じくとれる)。そこで、①のB-H特性の内のフェライトとケイ素鋼板の場合を取上げて、③に磁束Φと起磁力Hcあるいは励磁電流iの関係を概略(磁束量Φはフェライトとケイ素鋼板の鉄心断面積、巻数などで同じくは無い。しかし波形は三角形状に一定勾配で増減する。それは電源電圧が一定であるから。)の波形で示した。その時の電流波形の違いを図に示した。磁束が励磁電流で決まるという考えは捨てて欲しい。電圧の時間積分(コイル巻数nとして、∫(v/n)dt)の値で磁束は決まり、電流値で決まるのではない。それがファラディの電磁誘導の式の意味である。以上は、磁束Bと起磁力あるいは保磁力Hcの技術用語を基本に解釈をして来た。しかし、磁束とは何か?起磁力とは何か?その鉄系金属内の電磁気量の意味を考えて見よう。
磁束密度B[Wb/m^2]、起磁力Hc[A/m]の計測法を尋ねる。磁束量Φはどのような量か?次元は[Wb=Vs=(JH)^1/2^]である。電圧時間積かエネルギーとヘンリーの積の平方根かである。なお、電圧V=(J/F)^1/2^、時間s=(HF)^1/2^である。またコイル内の鉄心は断面積で磁気量が均一である保障は無い筈。電気回路の電圧と電流の意味は考察を重ねて来て、電線路空間のエネルギー分布に在ることを明かにして来た。しかし、最後の電力用変圧器の機能を分析しようと考えると、磁気に関する科学技術概念の物理的意味を問わなければならない。物理学はそれに応えてはいないと考える。電圧や電流がエネルギーの計測技術量である事を考えれば、磁束や起磁力も当然エネルギーで統一してその物理的意味を理解する必要に迫られていると考える。そんな事を考える時、アンペアの法則での磁気現象の解釈ではその物理的論理性が完全ではない事に気付いて欲しいと思う。だからと言って、ここまで築き上げて来た電磁気技術の有用性が失われる訳ではない。その科学技術の深い応用性は、その意味を知ればなお益々輝かしいものと理解できる筈である。自然の根本は極めて単純である。だからこそ複雑な変幻自在の姿で現れるのであろう。砂鉄一粒に思いを込めて砂鉄。砂鉄一粒に連結の意味を問えば、エネルギーの回転流が見えてくる。