生活電気の基礎(1)ー電力と電力量ー

昔の一時期、「期待される人間像」等と言う言葉が流行った。誰が人を規定するのか、如何にも日本的ニュアンスの表現である。全体主義的匂いがして嫌いだ。グローバル化の競争世界が、預言者『チャップリン』の皮肉が現実となった。富める者と貧しい者とが隔絶されたような歪んだ意識の生活に追いやられたように見える。工業技術社会がロボット化社会を推し進め、人の能力はその発揮する領域を狭め、人間の尊厳も動く道具の補助者程度に落とされてしまった。自分の不甲斐なさも無知が原因の一つかと思えば、社会を見据える知識が欠かせない事をつくづく思い知った。自然災害も原子力発電所崩壊事故も自然と科学技術に対する認識の問題に帰すると思う。私が一応専門と言える分野は「電気工学と電力技術」に関する事ぐらいかも知れない。エネルギー、電力の節約を考える必要になった。教育で教える内容は、「理科」等であるが殆ど科学技術社会の要請に応えられない教科内容に成っている。「理科」よりも生活の視点と市民の意識の安全性を『科学技術』に重点を置く必要性を強く感じる。理科教員は役にも立たない、技術音痴が多過ぎて、時代に対応できない状態に成っている。そんな意味も含めて、生活電気と言う観点から、電気の基礎を市民向けに書いておこうかと僭越にも考えた。最初にー電力と電力量ーの話を取り上げようと思う。電気理論を避けて、どのように電気に興味を持って頂けるかがカギになろう。

積算電力計と分電盤 生活電気と言う事で、住宅の電気回路の事から話を始めたい。家庭の電気の取り入れ口となる屋外に、『電気使用量の検針』を電力会社の人が毎月調べる『積算電力計』が有る。そこから屋内に入って、「分電盤」と言う『ブレーカー』の集合盤で電気使用量の契約量に対する制限や電気回路の安全使用を監視・制御する様な仕組みに成っている。屋内に入った配線は分電盤の最初のブレーカーに接続される。①に示した図の受電ブレーカーで、供給者の電力会社と需要家の利用者で決める『契約電流』を監視・制限する。図では50Aの例を示した。次に、「漏電ブレーカー」に接続される。ここでは40A定格で示した。この漏電ブレーカーは屋内電気配線や電気機器の絶縁不良を監視して、電気の漏れが有ると、直ちに回路を遮断する。漏電は感電事故や漏電火災を防ぐ重要な役目を持っている。さらにここでその電気回路を遮断する役目のブレーカーの動作機能を簡単に考えておきたい。その概要を私なりの表現で②の図に示す。ここでは、単相三線式配電線の場合を取り上げる。分電盤の最初のブレーカーは契約電流監視遮断器の過電流ブレーカーである。次に漏電ブレーカーに繋がる。内部回路は漏電遮断器の方が複雑である。

過電流ブレーカー この動作機能を先日電力会社の方に教えて頂いた。左図に示したようにa相電流とb相電流の合計値で過電流遮断すつ仕組みに成っている。そこが私の解釈、認識と異なる点であった。定格 50A であれば、各線路電流が 50A 以上で遮断するものと解釈していた。ところが、 a相と b相の合計値が 50A で遮断する仕組みであった。契約電流の意味が私の認識と違った。そこで考えた。当然契約電力の考え方は誤解のない表示に変更すべきである。契約は、 50A ブレーカーで表示を『契約電力 5kVA』と皮相電力表示にすべきである。『皮相電力』と言う意味は馴染みが無いかも知れません。説明しますと、電圧が100V と200Vの規定値であるから、100V だけで有れば50A迄、200V 電圧も含めば合計50A 迄使える事を意味する訳です。使用電力が何々[kW]と言うと力率と言う電気製品の特徴が影響する為、表示には適さない。『力率』と言う電気用語は解り難いかも知れない。100V で10A定格の電気製品があると仮定しよう。その製品の消費する電力が800W とする。その場合、皮相電力は1 kVA(=100V×10A)である。しかしこの製品は10A流れても、1kVA×0.8=0.8kW の電力、仕事率にしかならない。それは力率が 0.8 である為に、その電流の割には仕事率の性能が良くないと考えて良い。力率とは製品の仕事率の性能を表す意味がある。モーター等は力率が低くなり、電熱器等は力率がほぼ1である。ブレーカーの特性で参考に成る事を例示しておきたい。大体の電流しゃ断特性を図にした。定格遮断電流を超えると、大きさで遮断時間に差が有る事を示した。定格値ではほぼ 60 秒経過すると遮断する機能を備えている。

電流』と言う概念については、その物理的論理性から見れば、噓の概念である。と言わざるを得ない。上に述べて来たように、如何にも私の物理的解釈とは異なる説明に成っていると言われそうだ。技術と言うものが如何に巧妙な『法則』によって成り立っているかが、この電流一つの中に集約されていると見ても良い程、『理論の論理性とは何か?』の不思議が詰まっている。ブレーカーのコイル電流で過電流を遮断する訳であるが、その仕組みをよく見れば、電線の中に何かが流れている事によって動作する訳でないと考えられよう。要するに電線のコイルの周りに『磁気エネルギー』が生じ、その量の大小で、遮断条件が決まるのである。金属導体、この場合は屋内配線の「軟銅線」は電気的には、電磁波の反射材としての特性を持ち、電荷などを受け付けないと言うのが『電気理論』の最初の解釈なのである。要するに場合、場合で御都合主義を摂る解釈法が『専門的理論』の実態と観なければならない。

電力と電力量」 そろそろこの項の本論に入ろう。電力と電力量と言う言葉も、その使い方で良いのか私も気に成る点もある。電力量を積算電力量と言えば、誤解が無いだろうと思う。電力波形④⑤電力量を訳すと「electric energy」と言うようなので、意味は積算電力と同じと考えよう。④と⑤の波形で、電力と電力量の関係を示した。

④の図を考えてみよう。朝から電気を使い始めて、電気製品のスイッチのON、OFFに従って使用電力が変動する。『コーヒーポット』でコーヒーを入れる。最近気付いた。おおよそ650W、850W等と多消費電力の物が多い。長く入れっ放しにして置き易く、すると相当の積算電力[kWh]に成る(この記述は間違いです。温度制御でスイッチがon、offされている)。電力P[kW]の時間積分E=∫PdT [kWh] が積算電力、電力量である。玄関の外壁にあるメーターの中の回転円板の速さが電力の大きさに比例する。速い回転が長ければ、電気料金が嵩む。需要あるいは消費電力量の料金算定の基に成る。基本料金の他に従量料金 23[円/kWh]程度が掛る。参考に、エネルギージュールの単位[J]がどの程度かも示した。とても小さな値である。1[kg]の物を1[m]持ち上げる時の必要エネルギーが9.8[J]と言う事に成っているから、電力量[kWh]とは相当大きなエネルギーの単位である事に成る。

図⑤ の説明をしておこう。④の(※)部の瞬間を拡大したのが⑤である。時間を拡大すると、電力Pは電圧vの変化に従って、脈動している。脈動する電力は瞬時値であり、pと言う小文字を当てるのが業界の通例。⑤の打点表示した部分である。電熱器等はほぼ正弦波形に成るが、現在の電気製品は「インバーター制御家電」が多く成っている為、電力波形も歪み波形に成る。そんな実情も加味して電力波形に表した。100V、50Hzが東日本の電気系統周波数である。100ボルトと言うのは、正弦波交流電圧の実効値であり、その波形の最大値は√2倍で141ボルトである。さてここで、もう少し突っ込んで電力の意味を考えてみよう。電力pキロワットはpの千倍のワット[W]である。⑤図に無造作にpが波形を表示すると表現したが、考えてみれば、[W]は毎秒当たりのエネルギー[J/sec]を表すのである。電圧の一波長の時間は20[m sec(ミリ秒)]であり、その50 サイクル分を足し合わせた値が、p×1000[J/s]、p[kW]に成るのである。だから、電気工学の波形表示でも⑤図のように表現するが、その波形の瞬時値はp[kW]を表現できないのである。こんな事は専門家は気に掛けずに授業する。生徒・学生も気付かずに覚える。業界常識が歴史的に頑強な非常識を構築して行くのである。アンペアの周回積分則が1810年頃?からの真理であるが如くに噓の歴史を構築して来たのである。⑤図の電力波形pはどのように計算されるかと言えば、電圧 v と電流 i の波形の積を表現しただけである。p=vi cosφ [W]と言うような意味である。cosφは力率の意味を表す専門表示記号。ここまで来て、自分も驚いた。波形表現は何か直感的に理解し易いからと思って使うのであるが、本当に考えてみると単純な中に重要な事を見落としている事が多いと思う。波形のレベルの基準、時間軸がどの様な意味を持つかをきちんと説明しているか等も疎かな点で無いかと危惧する。電圧ゼロレベルとは何を表すか?である。pの話に戻そう。その厳密でない原因は電圧と電流の意味に隠されている。電圧の単位[V]=[Wb/s]、電流の単位[A]=[C/s]も、元もと1[sec]当たりの値を表現している。50サイクル分に対する値であるから、波形に表現しようが無いのかも知れない。益々迷路にはまりそうであるが、これが考える基本である。真理は深い所に落ち込まなければ安堵できないのかも。

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